症
翌日、一は石塚と同期1名が出勤していないことに気付いた。
一がそのことに触れるとあたかもそれが禁則事項であるかのように皆が口を噤んだ
一が石塚の名に触れると、オフィスの窓から雷が轟くところをみた。
石塚さんはどこにいるのか不思議に思った
一は石塚の家で泊った覚えがあるので、
住所に直接行ったが知らない苗字になっていた。
「俺が何したっていうんだよ!あぁ!?」
田中は時計に向かって叫んだ。
「にゃーん。あまり詮索しない方がいいってことだよ、田中くん。」
Lisaが腕時計の中からホログラムとして浮き上がり答えた。
一の腕時計にはLisaがインストールされている。一の作ったOSはPIOといい、5~6歳位の知能しかない。対してLisaは21歳の知能で田中ですらLisaを採用している。
雨照は田中ら5人の先輩社員である。伊坂やよいはスペシャルアシスタントコーチである。田中が石塚と1名の同僚の行方を聞くと
「やばいものが見えるんだよ!」
と雨照は叫んだ。虚空に向かって。雨照はプレゼンの時などに的確にアドバイスをしてくれる先輩である。彼の色は白。
田中一は同期5人のうち誰が消えたかを覚えていない。石塚以外に一人消えたという事実しか認識していない。だからおかしなことになっている。そう、彼は重度の記憶障害を発症した。
翌朝S病院で目覚めた。「お気の毒ですが、緊張性脅迫症候群と診断されますね。」
医師に言われた。ハーフの看護師が医師に付き添っている。彼女の名前はジェニファー。彼女もまた仕組まれ人である。
「あなたの病気は一朝一夕で治るものではないので、自宅での療養をお勧めします」
翌朝、田中のPCの使用権限がなくなった。
それにしてもPIOをポンコツと呼んでしまう田中一は歯がゆかった。Lisaに頼る自分という存在が歯がゆかった。
歯がゆさが押してコミュ力が低いにも関わらず伊坂やよいに勝負の話を持ち込んだ。
伊坂やよいが勝ったらキャッシュで3万円、田中一が勝ったら田中一と付き合う。種目は囲碁である。勝敗によって与えられる景品のバランスがとれていないのは伊坂やよいがよっぽど勝利への自信があるからである。
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