悪あがき

「くっ…っ!あ、そ、そうだ!アレだ!」


捕縛の縄で縛られ床に倒れている男の一人が思いついたように声を上げる

今から、何を言おうと何も覆りはしないのに

それでも、まだ最後の悪あがきをするつもりらしい


「ほ、ほら…冒険者の中には、色々迷惑をかけてくる奴らだっているだろ?

俺達は、そーゆう奴に絡まれても大丈夫なように、教えてやったんだよ」


一人がそう言うと、残りの二人も成程…と思ったらしい

パッと表情が明るくなり


「そうだぜ、俺達は善意を持って教えてやっただけだ」

「迷惑行為なんかじゃねぇよ、だから規約にも違反しねぇ」


まるで起死回生の一手だ…とでも言うように

胸を張って主張する三人…まぁ、床に転がってるので

本当に胸張ってるかはさておき、自信満々という雰囲気は伝わってくる


「善良な冒険者を捕まえるってゆーのかよ、憲兵さんよぉ」


ニマニマと憲兵に主張する男

その主張に呆れているのは、憲兵だけでなく

その場にいる大多数が男の主張にため息をついた


「善良な冒険者なら、その場に留まったはずだ

それをしていないお前達は、善良とは言い難いが?」


ギロッと憲兵から睨まれ、一気に顔が青ざめる男


「そもそも、お前達には他の者からも報告が上がってきている

本人に口止めをした所で、見ていた人から通報がきてるんだ

今までは物的証拠が無かったからな…なかなか捕縛まではいけなかったが

今回は映像もある…言い逃れは出来ないぞ?」

「あ、あれは…」

「捏造などという寝言は聞かん

そもそも、お前達の言う大人の数の理論でも負けているんだ

さっさと諦めろ」


憲兵は、男の主張をバッサリ切ると視線を上げユウキを見る


「今回は災難だったな

こんな冒険者ばかりでは無いから、心配しないで欲しい

コイツらは、キッチリ罰を受けてもらうから、安心してくれ」

「あ、うん。大丈夫だよ、今まで色々良くしてくれる人にも会ってるから

こんなメンドクサイ奴ばっかじゃないってのは分かってるし

(面倒な奴にも結構な割合で会ってる気もするけど…まぁ、いいか)」

「ハハ、いらぬ心配だったな

それでは、この三人は連行します」


そう言うと、憲兵は三人を連れて転送を使いその場から消えた


(ふぅ…とりあえず、これで一件落着かなぁ)


周りでは、ルヴィアやグレイヴがハイタッチをしたり

ディアナがグラスタにお礼を言ったりと

先程まで、憲兵さんの声がよく聞こえた静かな空間は無くなっていた


(さぁて…何するか…)


自分の事だったのに、まるで他人事のように

さっさと切り替え、次に何をしようか考え始めるユウキ

一番の目的だった事は知る事も出来たし

事の成り行きも見届けたし、何の問題も無い


(そういえば…罰って何なんだろう…?)


サラッと流していたが、罰とは一体何なのか

向こうなら、法律を犯せば逮捕されて懲役を受けるが…

気になる…が、コレを聞いても良いものか悩む

ココでは一般的な事を聞いてしまって

『ぇ?』みたいな感じになるのも嫌である


(図書館で調べるか…学校行った時に聞いてみるか…)


図書館で調べるのも良いが、せっかく学校に通うのだから

学校で先生に聞いてみるのも一手である

と、いうわけで、この疑問は先送りにする事が決定した


(んじゃ、家に帰って生産でもするか…)


周りの意識が自分に向いていない事をいいことに

ソロッとその場を後にするユウキ


(だって、意識こっちに向いたら、延々と話しに付き合わされそうだもん)


ユウキにインタビューをしようとしたディアナが、いなくなってる事に気付くまで

後10分…

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