いざ釣りへ

「んじゃ、行ってきまーす!」

「いってらっしゃーい」


ユウキは元気よく家を出て、まずは釣り具を求めて道具屋に向かう


「ん~…色んな種類あるかと思ったけど…」


釣り竿を探してみると、店先に置いてあったのですぐに見つかったが…

1種類しか置いていなかった

勝手なイメージだが、釣る魚によって、違うと思っていたので

かなり意外だった


(いや、もしかしたら、他の所には違う釣り竿あるかもだし…)


とりあえず、1種類しかないため、それを手に取り会計に向かう


「ほぉ…坊や釣りを始めるのかい?」

「うん、魚が欲しいってお願いされたからね(坊やか…)」

「そうかい…見た所親とは一緒にいないみたいだが…

使い方は誰かに教えてもらうのかい?」

「いや…教えて貰う人はいなくって…

(餌とかルアー置いてなかったよな…どうやって釣るんだろ、この世界では…)」


釣り竿の周りには、釣りに使うであろう物は置かれていなかった

他の所に置いてあったのだろうか…

とりあえず、知っている人から教えて貰うのが一番である


「よし、それなら、俺が教えてやろう!

釣り竿はこの木の部分…竿を持ってだな…

糸の先にある、針に魔力を固めた物をつけるんだ」

「へぇ~…そうなんだ(魔力が餌になるのか…)」

「後は、釣り針を川に投げ入れて魚がかかるのを待つ

グッと下に引っ張られる感覚がしたら

竿についているリールを巻いて引き上げる!

って感じだ」

「ありがとうございます!助かりました!

(餌以外は向こうと一緒だな…)」


お礼を言い、代金の1000セレスを渡して店を出る


「…そういや、あの坊や…一人で釣りに?

いやいや…まさかな…親がギルドに行って護衛は依頼してるだろ」


そんな事を店の主人が呟いていたとは知らずに


「さぁーて、釣り竿もバッチリ!釣り方も聞いたし、完璧だね」


気合十分なユウキは、今いつもの門から出て、北へ向かっていた

見かける物も、初めはいつもと同じ、木だったり、雑草だったり

魔獣も、スライムやブラウンボアがいて

特に目新しい物は無い


(まぁ、同じ町の北側行くだけだもんな…そんな大差はないか…)


ゲームだと、方向が違うだけでも、全然ある物が違うが…

流石に、そんな急激な変化はないようだ


(木は一杯あるし…雑草はいらないしなぁ…

体力草とか精神草とかがあってくれればいいんだけど…)


今一番の目的は魚のため

今歩いている道を一直線に進むつもりだ


「あら、アナタ一人で何処に行くの?」

(何が釣れるか楽しみだな~♪)

「ちょっと、アナタよアナタ!」


グィッと肩を掴まれたユウキは

掴んだ人の方を見た

そこには、赤い髪がショートボブになっている女性が立っていた

一見して、ミナミと同じ歳くらいだろうか…

と、そんな事を頭の片隅で考える


「何かな?お姉さん」

「『何かな?』って…アナタ一人で何処に行くつもりなの?」

「何処って、川まだ行くつもりだけど?」

「はぁ?!あなたみたいな子どもが一人で北にある川まで行くですって!!?

死にに行くつもりなの?!」

「いや、自殺願望は無いので、そのつもりは微塵も無いけど…」


ユウキはキョトンとして、女性を見る

その視線で、女性はユウキが本当に何も知らずに北に向かっていると察した


「…アナタの親は何処にいるの?」

「ぇ…?僕に親はいないけど?」

「っ…じゃあ、何処の孤児院にいるの!?」

「僕は自分の家に住んでるよ?」

「はぁ!!?アナタまだ仕事なんて出来ないでしょ!!?」

「いや、僕、仕事してるからね、ホントに」

「ちょっと、冗談はやめなさいよね!

アナタ、まだ入学もギルドに登録出来る歳でもないのに、どうやって働くわけ!?」

「…(やっぱり、そう思われてたんだね…)

僕、ちゃんとギルドに登録してるんだけど…」

「…ぇ?」


今まで凄い剣幕だった女性は

ユウキがギルドに登録していると知ると

勢いを削がれたように、一時停止をした

思考回路が追いついていないのだろう


「ちょ…いや、嘘はダメよ!」

「いや、嘘じゃないよ」

「なら、証拠を見せてみなさいよ」

「はぁ…(面倒な人に呼び止められたなぁ…)」


そんな事を考えながら、ユウキはインベントリの中からギルドカードを出す

それを女性に見せると

女性は疑いの眼差しで、ギルドカードをジーッと見つめる


「…本…物?」

「偽物のギルドカードが出回る事ってあるの?」

「あるわけないでしょ!!?」

「じゃあ、本物だよね?」

「ぐっ…」


女性を言い負かし、用事は済んだ…という事でユウキは先へ進もうとする


「ちょ…待ちなさい!

ギルドに所属してる事は分かったけど、その先はダメよ!」

「何で?」

「魔獣が格段に強くなるからよ!

普通、釣りに行くなら、護衛を付けるものよ!

アナタが例え戦闘職であったとしても、勝てる相手じゃないわ」

「へぇ!それは楽しそうな所なんだね!

釣りの前に、まずは魔獣討伐だなぁ~♪

あぁ~依頼受けてこれば良かった…

あ、でもキョウヤに怒られるからダメだね」

「(な…何なのよ…この子…)

何で嬉しがるのよ!危ない所だって言ってるのよ!?」


ユウキの思考回路が理解出来ないのだろう

女性は必死に止める

それは、ユウキがただの子どもで

普通の子どもの強さしか持っていない…と思い込んでいるからだ

女性からしたら、親切心からなのだろう

しかし、ユウキにとっては余計なお世話でしかなかった


「だって、強い相手と戦えるって楽しいじゃん!

それに、新しい魔獣との遭遇って事は、新たなアイテムとの遭遇!

これが楽しみ以外なるわけないじゃん!

まぁ、危ないかどうかは、ちゃんと相手を見極めるから

無茶はしないので、ご安心を」

「はぁ!?アナタみたいな戦闘経験もそんなにない子どもが

簡単に相手を見極められるわけないでしょ!?

ちょっと、待ちなさい!!」


いつ終わるとも分からない女性の話から逃れるために

ユウキは、さっさと先へ進む事にした

しかし、女性は後ろからついてくる

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