新たな魔法

「ユウキちゃん、それ取り外したら、ただの箱になっちゃうよ?」

「まぁまぁ、慌てない慌てない」


楽しそうにニヤリと笑うユウキ

氷の魔石と入れ違いで、ユウキの手元には3つの魔石があった

透明なそれは、まだ魔力が込められていない事を示している


「何の魔法を入れるの?

普通に物を保存するなら冷やすくらいだけど…」


世界が変わっても、物の保存の仕方という物は左程変わらないようだ

冷やす事で傷むのを遅くする…


「まぁ、向こうじゃそれしかないけどさ

こっちには魔法があるじゃん!」

「いや、魔法があるからって言っても、食材の保存…

っていうか、傷む物は冷蔵以外ねぇんじゃねぇか?」


そのキョウヤの意見に、ユウキは「はぁ…」とため息をついた


「まぁ、キョウヤはまだ魔法の事そこまで詳しくねぇもんな

あ…忘れてた…あの魔法まだ使ってねぇから、魔法陣書かないと…」


そう言って、ユウキはおもむろに紙とペンを取り出すと

丸を書き、その中に「ZIKANNTEISI」と記入し


「何に使おうかな…」


紙に何を書いたのか分からない2人はユウキの行動を見守るしかない

そんな2人に気付かず、魔法発動をどうしようか悩むユウキ


(適当な物で…時が止まった事が分かる物…)


時計を止めてしまったら、解除が上手く出来なかった時に困るし

何より、時間がズレてしまっては困る

まぁ、戻せばいいのだが…手間が増えてしまう

だからと言って、その辺にあるテーブルやイスに魔法をかけても

イマイチ効果が出ているかが分からない


(お!あれなら!)


目にとまった物…それは…


「どうしたのユウキちゃん?」

「いや、魔法使おうにも、良いマトが無かったからさぁ~」


そう言って、ユウキは水の魔石に触れ、水を流す

水は重力に従って上から下へと落下していく


「どんな魔法を使おうとしてるの?」

「ふふん、今からこの水に魔法をかけるから

それを見て、どんな魔法か考えてみてよ」


ユウキは2人に魔法陣が見えないように、水に向けると


(魔法発動!時間停止!)


☆魔法:時間停止を獲得しました☆(ユウキ)


心の中で唱える

すると、水は上から下への落下を停止させていた


「えーっと…水が動かない…って事は、氷の魔法かな…?」

「いや、氷ならこんな透明度はねぇんじゃねぇか?」


う~ん…と考えているミナミの横からキョウヤが口をはさむ


「でも、天然氷とかで滅茶苦茶透明度高い氷ない?」

「いや、ココにそんなのあるのか…?」

「…えーっと…今の所無い…かなぁ…多分」

「じゃあ、これは氷じゃないって事だよな…?」

「だね…と、なると…何で水が止まったのか…?」


2人はそろって「「う~~~ん」」と考えている


(いや…答え言ってるんだけど…)


そう、ミナミの言うように、水は止まっているのだ

その時間が止められてしまったから…


「…てか、簡単に考えて、時間が止まってるんじゃ…」

「えぇ~…そんな事ないよ!だって、時空関係の魔法はとってもレアなんだよ

そんな簡単にホイホイと使えない代物だよ」

「いや、コイツ普通じゃねぇし…」

(なかなかにシツレーな事言ってるけど…キョウヤがアタリだな)


ミナミにはこの世界の普通が頭の中にある

それがあるがために、そんな事はあり得ない…と言う風になり

答えから遠ざかっていく


「やっぱりコレは氷の魔法だよ!

この世界に無かったとしても、ユウキちゃんのイメージでどうとでも変わるし

ユウキちゃんが透明な氷をイメージして魔法をかけたんだよ」

「俺は時間を止めたんだと思う」


さぁどっちだ…とでも言うように2人はユウキを見る

ユウキはフッと笑い


「せーかいは…」


2人は息をのむ


「キョウヤの、時間を止めた…でした~」

「よっしゃー!!」

「えぇぇぇ!!!?」


喜ぶキョウヤに驚くミナミ…そして得意気なユウキ


「ちょ…ちょっとユウキちゃん…い、いくら何でも…

時を止める魔法なんて…時空関係の魔法を滅茶苦茶極めた人でも難しい魔法だよ

まぁ、時空関係の魔法がそもそも難しいんだけどね

そもそも適正がある人なんて、ほとんどいないし…

適正なくても、頑張れば多少は使える物だけど…

時空関係の魔法で一般的なのは、空間を歪めて広げる魔法とか

帰還魔法とか…無い事は無いけど…時間を止めるなんて…」


ブツブツとこの世界の普通を語り続けるミナミ

彼女の中にある普通が今の現象を認める事が出来ないようだ

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