勝負の後には…

「まだ続ける~?」


手加減はしないが、一方的にやり過ぎたら

逆にこちらが悪役になりかねないので

ユウキはニコニコしながら聞いた

先程の攻撃を受けた後に、この笑顔は恐怖でしかない

しかし子ども相手に負けるわけにはいかない


「ち…調子に…乗ってんじゃ…ねぇぞ…」


ゲアルはよろめきながらも、構える

まだ、負けを認めるつもりはないらしい

一方、レアルの方は動く気配が無い

吹き飛ばされた時に、気を失ってしまったようだ


「お前の弟、気ぃ失ってるぞ…」


テクテクとレアルの所まで行き、状況を確認したキョウヤ

柵に激突したらしいレアルは目を回しており、すぐに復帰は出来そうにもない

というか、あの勢いの激突に耐え切るこの柵

なかなかに頑丈だな・・とキョウヤは感心したそうな


「お…俺一人で、十分だ!」

(いや、絶対無理だろ)


勝算があるようには思えない

キョウヤは心の中で、バッサリ否定しておいた


(弟から武器拝借すりゃ、少しでも攻撃力上がるのになぁ…)

「うおりゃぁぁぁぁ!!!」


剣で一直線にユウキを狙うゲアル

ユウキに剣が効かない事を覚えていないようだ

スッと軌道を避け、ゲアルの腹にパンチを一発入れ

そして、ジャンプして、ゲアルの頭に回し蹴りをくらわせる


「がはっ?!」


今度はこらえられず、倒れ込むゲアル

その上には、400という数字が出ている


(パンチは力抜いたからな…500より少なくなったんだな…)


本来、全力でやれば250のダメージが2回なので500だが

残り375しかHPが残っていなかったし

ユウキ的には、最後の回し蹴りに全力を尽くしたかったので

次の動作に移りやすい程度に力を入れたら、少しダメージは軽くなってしまった

多少減った所で、HPは0になる事に変わりはない


「ホント、毎回迷惑な奴だよね…」


そう言って、ユウキはミナミとキョウヤの元に戻っていく

周りで見ていた人は、予想とは違う結果に唖然と立ち尽くしていた

今、起きた出来事が本当なのか夢なのか…頬をつねる人もいた


「本当にこやつ等のような者もおるから、困ったものだ」


その場に響く、落ち着いた声に、集まっていた人達の視線は

一斉にそちらに向けられる


「マスターだ…」

「ギルドマスターが、こんないざこざに出て来るなんて…」


皆が周りで、何を言おうが気にする事なく

ゼノンは柵へと向かう

そこで気を失っているゲアルとレアルに水を振りかける


(…?あれは…何だろう…?ポーション…にしては色が違うし…

いや、ランクが上な物ならまだ見た事ないだけかもだし…

でも、HP0になってる人にポーションで良いのか…?

復活薬的な物があったりするのかな…?

でも、ココではHP0=死んでるじゃないから…ポーションでも通用するような…)

「さて、今までこやつ等の迷惑行為に関して、色々と連絡は受けておる

口頭注意や一時的に制裁措置も加えてきたが…あまり反省の色が見られん

と…いうわけで、今回最終措置をとる事にする」


そう言ってゼノンは一呼吸置く

誰も喋ろうとはせず、ゼノンの次の言葉を静かに待っていた

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