都会の一歩手前

「それじゃあ、今いるこの場所の説明をするけど良い?」

「はーい、お願いします♪」


そう言うと、ユウキはマップを開き、ミナミに見せる


「今、いる所はラグーンっていう街で

ちょうど、この辺りがココ…僕の自宅があるって思ってもらったら大丈夫」

「ラグーンって結構大きい街じゃない?」

「そう…なのかな…?

僕は、まだこの街以外の所には行った事が無いから、分からないんだけど」

「今、ラグーンって聞いて、私の中の情報では

結構大きな街で、都市の一歩前…っていう感じね」

「都市の一歩手前…ねぇ?」

「ユウキちゃん、今東京とか大阪辺り思い浮かべたでしょ…」

「まぁね」

「あんなのに比べたら、ここの都市なんて、都会じゃないけど

今のこの現状から考えたら、結構な都会な感じだからね!!!」

「あぁ…まぁ、そうか…」


向こうの世界だって、昔栄えた所は都となっていたわけだし

それと同じような物なのだろうが…


(東京とかを知ってしまっているせいだろうな…ココが都市の一歩手前って

何か違和感しかないわ…)


確かに、栄えてる事は栄えてるのだろうけど…


(これは、一度村とか町を見てこなアカンな…)


まだまだこの世界の一般的な物が分かっていないユウキは

ため息を一つ吐いた


「で、まぁ、今僕達は、ココのギルドに登録して

冒険者として仕事をこなして生活している感じかな

近々学校に入学する予定だけど…」

「え…ユウキちゃんって…14歳なの!!!?」

「ちょっと待って、何歳だと思ってたの!!?」

「10歳かそこらかと…」

「…」

「普通に親みたいな大人がいて、養ってもらってるのかと思ってた…」


ミナミの中では、異世界に飛ばされたユウキは

優しい老夫婦に拾われて、養われている…的な感じになっていたようだ

全く、その事実は無いのだが…


「だって、こんな家が立派な作りをしてるんだよ!!?

どっかの貴族の子として養子にされました…とか、全然あり得るよ!」

「いや、これ僕が作ったからね」

「嘘!!?凄い!」

「いや、普通に道具使えば簡単に出来るよね!!!?」

「そーだけど、イメージ力というか…何と言うか…

あ~でも…向こうの世界知ってたら、これくらい普通だよね…確かに…」


向こうの世界を基準に考えたら、普通な事に気付き

ミナミは落ち着きを取り戻していった


「そうそう、向こうの世界の普通をこっちで再現しただけ」

「こっちで再現しようと思うのが凄いけどね」

「だって、再現しないと、料理出来ないし…」

「??料理するのが好きなの??」

「いや…まぁ普通だけどさ…

ココの料理…って、あれ?料理知らないの?」


ココの料理はとりあえず味が無い

使った物の味しか出さない料理…

ココの知識を持っているのなら、どんな料理が出てくるか分かりそうだが…


「確かに調味料は使ってないみたいだけど…

そもそも素材にどんな味がついてるか分からないから…」

「あぁ、なるほど…知識としてはあっても

味は食べた事ないから、分からないって事か…」


こればっかりは、知識だけでは何とも出来ないので

実際に食べてみるしかないのだが…


「まぁ、先に言っておくと

味が無くて美味しくないから、それに耐えられないので、自分で料理する事にしたのです」

「…なるほど…(そんなにマズイのかなぁ…?)」

「ま、後で食べてみなよ」

「そうだね…それより、さっき『僕達』って言わなかった?

まだ他にもいるの??」


すっかり話が違う方向に逸れたユウキは

ミナミの一言に一瞬考え…そして、思い出し、ポンッと手をたたいた


「そうそう、ココにはもう一人、キョウヤっていう男が住んでるよ

僕と同じ歳で、あの部屋を使ってる」

「え、ユウキちゃん…同じ歳の異性と一緒に暮らすって危ないよ!!?

ユウキちゃん、可愛いのに襲われたらどうするの!!!?」

「ぇ…っと」


とても力説しているミナミだが、ユウキには実感としてピンッと

来るものは、何も無いらしく、首を傾げている

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