面倒事は回避出来なかった

「さ~て、家に帰って炭作るかぁ~」


図書館を出てグーンと伸びをするユウキ


「あぁぁ!この子です、この子!」

「ぇ?」


のんびり伸びをしていたら、大きな声が横から聞こえてきた


(誰だよ…迷子の子どもでも探してたのか?

でも、もーちょっと声の大きさは落として欲しいなぁ…)

「やはりな…ユウキ君、少し話を聞きたいのだが…」

「ぇ?僕…?」


自分に全く関係していない話だと思っていたら、横から名前を呼ばれ

そちらに視線を向けると…


「あ…ギルドマスター…と、………誰か知らない人…」

「そりゃ、一瞬しか会ってねぇからな!!!!」

「あ、やっぱり?」

「俺はお前の事、しっかり覚えてたけどな!!!

まぁ、ガキがダークサイドの人間連れてきたから覚えやすかっただけだが…」

「って事は…憲兵さんか…

え…何聞きたい事って(面倒事回避出来たと思ったのになぁ)」

「ココで話すのもなんだ…ギルドの方まで来てもらえんか?」

「分かりました(うぅ…錬金術の時間がぁ…)」


早く炭を作りたかったために、残念な気持ちを抱えながらギルドに向かう

ギルドマスター…憲兵…そして、小さな少年…という

よく分からない構図に、街中では異様に目立ったが

図書館からギルドまでそこまで離れていない事が幸いだった


「あんな小さい子が、憲兵に連れて行かれてるぞ…何やったんだ?」

「盗みか…?でも、盗みなんかで、ギルドマスターまで出てくるかぁ?」

「迷子かしらねぇ?親御さんの所まで無事につけると良いけど…」

(全部ちげーよ!!てか、この組み合わせ最悪じゃん!!)


心の中でツッコミを入れたが、勿論届くわけも無く、ギルドに到着し

3階の部屋までさっさと歩く


(はぁ…マジで僕が何かしたみたいな構図だったじゃないか…)


本当なら、金塊の発見者やキングブラウンボアの討伐など

様々な事を成し遂げてきたユウキなら、情報誌に載り知名度も上がっていただろう

普通ならば…

今回、情報誌に情報そのものは載ったが

顔などは載せていないため、誰もユウキの事など知らないのだ


「さて、本題に入ろうか」

「はぁ…そうして下さい」


ゼノンはユウキと憲兵の男性にソファーに座るように促し

ユウキと憲兵の男性はソファーに座る


「今回、ユウキ君がダークサイドのディラムを捕まえたのだな?」

「まぁ、そうなります…ね…」

「何処で出会い、どのような顛末だったのか、聞かせてくれんか?」


憲兵の男性は、紙を取り出し


「音声言語記録」

「(やっぱ、記録されるのかぁ…)えーっと…遭遇したのはレレナの採集場ですね

僕達が到着した時には、既にレレナを採集していました

そして、ダークサイドの人とは知らずに声をかけました

そしたら、ゴーレムを召喚してきたので、これを討伐

最後に残ったその男を蹴り飛ばして…反撃する気が無くなった所を送り届けました」

「お前…一瞬で現れて消えたけど…帰還以外に何使ったんだ?」

「あれは、転送魔法を使って…」

「はぁ!?転送魔法なんて

そんなの何十年…何百年と修行した時空魔法適合者のみが使える特別な魔法なんだ

お前みたいな、ガキが早々に使えるもんじゃねぇーの!」

「いや、この子は時空魔法適合者だからな…別に不思議ではないぞ」

「ぇ…?ぇ?…えぇぇぇ!!!?」

「まぁ…一応…(むしろ、全て適合ですけどね…)」


ゼノンの肯定に、憲兵の男性は驚きの声をあげた


「時空魔法の適合ってだけでもレアなのに…もう転送魔法使えるとか…」

「ゴーレムといえば、石で出来た人形だが…アレはかなり討伐しにくいはずだが…」

「核を見つけるのが大変だったけど…武器を使えば別に…」

「(なるほど…武器の性能がどれくらいかは分からんが…)

確かに、お前さんなら可能だろうな…」

「え…ギルド長…ホントですか!!?

ゴーレムって言ったら、Eランクの冒険者が倒す相手ですよ!!?

こんなちっちゃいガキが一人で倒せる相手では…」

「普通なら無理だが…この子は普通とは少し違うんだよ」

「…そう…なんですか…」

(普通じゃないって言われた!!?まぁ、普通とは言えないけど!!!)

「それに、あの男…ディラムの独り言とも合致しておるし…」

「う…そうなんですよね…」


憲兵の男性は、ディラムの言葉を思い出し

納得したくはないが…納得せざるおえない

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