声をかけてみた

「今は割れない…な」


ユウキは思い切り膜に拳をぶつけるが割れなかった

ついでに、剣も取り出して突き立てる…が、割れずにあった


「お前、剣まで出すか…フツー」

「どこまでの強度があるかは知っておきたいだろ」

「そうかよ…でも、割れねぇし、さっさと取り出せよ」

「そうだな…」


今確認出来る手段を全てやり尽したので、ユウキは掘り出しにかかる

周りの土を払いのけ、持ち上げる


パンッ


「っ!?わ…割れた…」

「持ち上げただけだぞ!?」

「ん~…」


剣を突き立てても割れなかった膜だが

持ち上げると、先程のように割れて無くなった

持ち上げただけなので、先程の剣を突き立てた時より力を込めているわけもなく…

その現象にユウキは「う~ん」と考え出す


「あそこに人がいるんだし、聞けばいいんじゃねぇの?」

「ったく、この世界の常識知らねぇって、あっちこっち触れ回ってどーすんだよ」

「あの2人には話してただろ?」

「そりゃ、2人が気付いたから仕方なくな」

「いいじゃねぇか、今の所変な人とは会ってねぇんだし

意外と親切に教えてくれるかもだろ」

(変な人…というか、人に絡む輩はいるんだけどなぁ…キョウヤは出会ってねぇから…)

「こんな事に時間費やしてたら、日が暮れるって…おーい!」

「ちょ、キョウヤ!?」


渋るユウキを気にせずに、キョウヤはレレナを採集している人に声をかける

声をかけられた人はゆっくり、キョウヤの方を向く

4・50歳くらいの男性は、こちらをジーッと見つめ

ただ、キョウヤが駆け寄って来るのを待っていた


(何で、何も言わずに待ってるんだ…?

いや…口は何か動いてるけど…)


キョウヤの呼びかけに対し、返答が無く…だが、口は動いているという事に気付いたユウキ

だが、それがどういう事なのかは分からなかった


「っ!!?(魔力の揺らぎ!!?)キョウヤ!あぶねぇ!」

「っ?!」


その男まで後1m…という範囲に入った時、ユウキは魔力の流れが異常な事に気付き

キョウヤの腕を掴み、後ろに飛び退く

次の瞬間には、ドーンッという大きな音と共に、砂埃が辺りを覆い何も見えなくなった


「な…何なんだ!!?何が起こったんだ!!?」

「わっかんねぇよ!…爆発だったのか…何なのか!

この砂埃が邪魔だ!風魔法発動、疾風!」


ユウキが魔法を使った瞬間、砂埃は風にさらわれ、視界が開けた

そして、真っ先に確認した場所…先程まで男がいた所の近くには、大きな石の人形があった

そう、丁度キョウヤがいた場所あたりだ


「な…んだ?あれ…」

「石の人形…というか、ゴーレムって感じだけど…(鑑定)」


◇ゴーレム(召喚)◇


HP:500

MP:300

攻撃力:400

防御力:500


ドロップアイテム:召喚のため、なし


※何処かに核が存在し、それを攻撃しない限りダメージにならない


◇終◇


「!?…マジか…

(僕の今の攻撃力は500…素手の攻撃は相手にダメージにならない…

剣使った場合、250の攻撃が有効…だが、核を見つけなきゃ話にならねぇ)」

「あの男は何処行ったんだ!!?」

「ハハハハ!俺の事かぁ?心配しなくても、ちゃんといるさ」


ゴーレムの後ろから男の声がする

先程とは違い、よく聞こえてくる


(あの口が動いてたのは…召喚に必要な呪文か何かを唱えてたって所か…)

「!!?何で急にこんな奴出すんだよ、意味分かんねぇ!」

「何で…なんて、不思議な質問をするんだなぁ~

声をかけられた…それはつまり、戦闘を申し込まれた…という事だろう?」

「んなわけねぇだろ!!!」

(あ~…いわゆる、変な人か…)


男の論理に、ユウキは一人、そんな決断を下していた


「あぁ~…採集してたから見えなかったのかなぁ~?

まぁ、確かに単独行動っていうのも珍しいからなぁ~、気付かなかったのかぁ~

若いのに、可哀想だなぁ~…って、言うわけねぇだろ、ハハハハッ

ほら、見て見ろよ!俺様の左手を!」


そう言って、男はゴーレムの上に乗り左手の甲を2人に見せつける

そこには、真っ黒な翼が対になって描かれていた


「真っ黒な翼…?」

「そーだ、漆黒の翼!

この俺様は、ダークサイドの人間だ!ダークサイドの奴に声をかけるってぇ事は

殺されに来た…って事だろぉ?」

(…ダークサイドの人間って、皆こんなメンドクサイ性格なのかな…)


イメージしていた、ダークサイドという組織は、暗殺部隊みたいな

統率のとれた悪の集団みたいなイメージをしていたが…

目の前にいるのは、どちらかというと、その組織の下っ端で柄が悪いですよ…的な感じの人

まぁ、つまり、やられ役の人…という感じにしか見えない

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