転送魔石

「とりあえず、報告して家に帰ろ」


いつもなら、何かをしようと思えるのだが

伐採にキングブラウンボアの討伐でクタクタだ

他に何かをする気になれない

それに、時間も結構良い時間である

太陽は沈みかけ、綺麗な夕焼けを見る事が出来た


「えーっと、イメージはとりあえず自宅かな」


家のリビングを思い浮かべ、転送魔法を発動する

次の瞬間には、自宅のリビングにいた


「あ~帰ってきた~

 さっさと報告行こう」


いつもより、ゆったりとした動きで、ギルドに向かう

夕暮れ時のリーシェ通りには、仕事帰りの人や

飲食店で晩御飯を楽しんでいる人

様々な人が混在していた

そして、ラーグ通りに出ると、その賑わいは更に増える

ユウキは、何とかその人達をすり抜けてギルドへ入る


「はぁ…マジしんど…」


ギルドの中は比較的人が少なく、並びはしたものの、すぐに受付に到着する


「あら、期待の新人君だわ

 私、初めて見たわ…ホントに小さいのね~」

「小さいは余計なんだけど」

「あら、気にしてたのね、それはごめんなさい

 いつも、傷一つ負わずに依頼してるって聞いたけど…

 今日はえらくズタボロね…」

「おかげさまでね…」

「??」

「…はい、依頼は達成してきたから」


ユウキがランクアップの試験を受けてるなんて知らないお姉さん

そんなお姉さんに説明するのが面倒なユウキは

さっさとギルドカードとカウントカードをお姉さんに押し付ける

お姉さんは慣れた手つきで手続きを進めていく


「なっ…キングブラウンボアと戦ってきたの!!?

 なるほど…むしろ、アイツ相手にしたのにその傷は、少ないと見るべきね」


お姉さんは一人納得していた


「それはどーでも良いけど…

 あと、コレ採集のクエスト」


ユウキは解毒草を30個取り出して、ハッと気付く


「あ…セレインの湖の水…入れ物に入れてねぇ…」


ユウキは、魔力を使ってビンを錬成し

インベントリから森で作った魔石を1個取り出す

そして、魔石を発動させる

すると魔石から水が流れでてきた


「よし!これでOK」


流れ出た水をビンに入れて、蓋をする

魔石の発動を止めてインベントリに戻す


「はい、セレインの湖の水」

「いや、ちょっと待って…今の何!!?」

「え?今の?目印をつけた魔石に転送魔法を入れて

 1つを発動した状態でセレインの湖に沈めて

 こっちの魔石を発動させたら、向こうから水が転送されてくるっていう仕組み」

「あの高等魔石をそんな簡単に作れるのがオカシイのよ…」

「あ…ハハハ…」


確かに、簡単そうに言ってのけたが

そもそも、転送魔法を使える人が少ない

確かにユウキのやり方は、転送魔法を使える人が作った物で発想はあった

作った人はもちろん使っていたし

やり方としては知られている

しかし、出来る人が少ないので、普及していない

大変珍しいやり方なのである

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る