第19話職業選択

決闘が終わり闘技場から立ち去る。四人で荷物を運ぶ。



「こうも荷物が多いと運ぶのに不便だな」



自ら奪ったのにも拘わらず文句を言うセリム。アハハと笑うラッツ。フィーネはなら盗らなければいじゃないですかとこちらはセリムに向かい文句を言う。


取り合えず酒場に移動しテーブルにドカッと荷物を置く。ここで装備やアイテムの見分をするのだ。さて、いざやりますかと意気込んだところで仕事があると言うのでフィーネとは別れた。



「鎧とかは取っとけば使えるかもだけど持ち運べないしな」


「ならアイテムポーチを使うのはどうですか?」



メルが発言してくる。今まで話したことが無かったので急に掛けられた言葉に少し驚き、メルの事を見つめてしまう。見つめられてメルは何かを思い出したかのようにいきなり立ち上がった。



「遅くなりましたけど、昨日はありがとうございました。」



そう言って頭を下げてくる。



「あぁ、オーガのことね。気にしなくていいよ」



大したことではないと流しアイテムポーチについて聞く。



「アイテムポーチって言うのは、異次元空間に道具などを入れていくことが出来るものだよ。色々な形があるんだよ」



いきなりメルの言葉使いが代わり、饒舌になったのをみて、今度はさっきまでとは違う意味で見つめてしまう。


するとアハハいきなりごめんと謝罪を言われた。多分先程のお礼を言う前の言葉がとり作ったものだったのだろう。恩があるから失礼な態度はとらないようにしていたのかもしれない。



「あー、いや、こちらこそ悪い」



セリムとしてもちょっと驚いただけで見つめてしまった事に謝罪をし、話の続きを促す。



「ポーチって名前がついてるけど、色々な形があってリングタイプやネックレスタイプ、イヤリングとかね」



アイテムポーチに関してはどうゆう物かは知っていたが多種多様な物があるんだなと少し感心させられる。



「リングかネックレスかだな、ていうかそれって高いんじゃないの?」


「そうだね、僕たち初級冒険者にはまだ手が出せないものだよ。一番安いのでも金貨十数枚とかじゃなかったかな」



今まで奪った品を見ていたラッツが会話に加わとてくる。



「案外するもんなんだな…」



はぁーとため息を漏らすセリム。盗ったアイテムの中にアイテムポーチが入っていれば良かったのだが世の中そんな上手くはいかなかったようだ。



だが、セリムの運はまだ残っていた。売ろうと思って持って来ていた幾つかの魔石を売り銀貨六十枚程になり、装備を売りに武器屋行くとオードの持っていた大剣とジャンが嵌めていたメリケンサックらしき物がオーガの上位種オーガジェネラルと言うB級のモンスターを使った物だったらしく金貨七枚。その他諸々合わせ金貨九枚になった。三人から盗った金と先程魔石を売った金を合わせて金貨十枚になり何とか収納量が一番低いものだか、リングのアイテムポーチを買うことが出来た。



「一気に散財したな…」



散財してしまった為、金を稼ぐ為にギルドへと一行は戻ることにした。時間は昼過ぎだったが食事よりも金!と言う事で一行はギルドに直行だ。主にセリムが。






「今更なんだけどさ、二人は何であいつらに絡まれてたんだ?接点があるようには見えないんだけど」



本当に今更な質問だが、今まで色々ありすぎたせいで今やっと聞くことが出来たのだ。



「俺たちはまだ冒険者では初心者のDランクだから、先輩の冒険者からいろいろと教わってたんだけど運悪くね…」



そうなのとメルが頷く。話しを聞くと昨日のオーガに襲われたのもオードに早く強くなりたいならオーガでも狩ってこいと脅された所為だったのだそうだ。まったくひどい奴らだ。弱い物虐めしか出来んのか。そういうセリムも装備などを奪って戦う術を失わせたので人の事は言えない筈であるが、そこは棚上げだ。



「まぁでもセリムのおかげというか所為というか、ノウハウを教える先輩をまた探さないとだけど…」



感謝にも嫌味にも聞こえるセリフだがラッツの顔を見れば感謝しているというのが分かった。



「そうだ! セリムも冒険者初心者なんだよね!?なら一緒に誰かに教えてもらわない?」



メルから思いもよらぬ誘いを受けるセリム。確かにセリムは冒険者として戦闘の力量だけは高いが冒険者としてのノウハウは全くと言っていいほどないので教えてもらえるなら是非ともそうしたいと思う気持ちがあった。



「悪いな二人とも、やらなくちゃいけない事があるからさ」



二人ともそれが何か聞きたそうな顔をしていたが、セリムが思いつめたような顔をしていた為に聞くことははばかられた。



「そっか、それは残念」



会話しながら移動し漸くギルドに到着した。すると先程の決闘を見ていたものなどがいるのだろう。あちらこちらからヒソヒソ声が聞こえてくる。



「知ってるか、オードたちを倒した奴って噂じゃまだ無職(ノージョブ)らしいぜ」

「はぁ? 何言ってんだお前、ノ―ジョブであの強さの訳ないだろ。どんなバケモンだよ」

「つーかあいつ、素手で剣止めてたよな」



会話が聞こえてくるが、すべて無視だ。知らない奴に構ってなどいられい。さっさと先程散財した金を回収しなければならない。なので進む。



「さてと依頼を選ぶかね」


「そういえばセリムってジョブについてないんだろ?」


「え! そうなの!?」



いきなり出鼻を挫かれる。どうやら周りの会話を受け止める方向でラッツはいくらしい。だが、職(ジョブ)については少し前にも聞いたことがあったので気にはなっていた為ちょうどいいとも思えた。



「まぁ、就いてないと言えば就いてはないが、無職と言う名の職には就いているかもな」



冗談めかしたセリフにラッツもメルも呆れた目を向けていた。






「どうも、フィーネさん」



ジョブについて聞く為に受付のフィーネの所にやってきた。二人は今さら聞くこともないし、色々と教えてくれる先輩冒険者でも探してくると既に分かれている。



「こんにちわ、セリムさん」



あんな事≪決闘≫があった直後だと言うのに変わらずの態度。受付の鏡だね! good job!なんて思いながら職(ジョブ)の事について聞く。



「ジョブとはある一定の条件をクリアすることにより獲られる一つの事に特化したものの事です。ジョブに付くとステータスにボーナスと専用のスキルが付きます」


「条件とは?」


「単純にレベルです。 最初は20、次が30、50、80とレベルが上がっていきます。次の職を取得するにはレベルを上げれば就けますのでモンスターなどをじゃんじゃん倒してください」



成程とジョブに関してある程度理解したセリム。どこで就けるか聞くとニ階の左手側一番奥の部屋に案内された。


その部屋ちは中央に水晶玉と思わしきものが置いてあり、それ以外は何もなかった。



「その水晶に手を置けば頭の中に選べる職業が表示されます」



言われた通りに手を置く。すると頭の中に職業が表示される。




一次職:戦士・剣士・闘士・魔術師・魔法医師・狩人・強化者・異端者


二次職:魔法戦士・剣闘士・拳闘士・魔導師・狙撃手・異端児



レベルが30にいってるからだろう。いきなり二次職まで表われたのは。無難なところでは、剣士や魔術師といったところだろうか。



「フィーネさん、ちょっと聞きたいんですけど、ジョブってギルドカードに表示されたりしますか?」



頭にジョブを浮かべ目をつぶったまま質問する。



「え、それはまぁ一応載りますよ」


「それは隠蔽しても問題はないんですかね?」



この質問はセリムにとって一種の賭けだった。職に見られたくないものがあるのと自白していると言うものだ。何より職を隠して得になることは無いだろう。寧ろ損の方が大きくなるはずだ。



「隠すのは問題ないですが、仕事などでは職業が分からなければパーティなどを組んだ時などに不具合が生じることがあります。後は…え~と…特にはですかね、というか見られたくないものを選ぶ気なんですか?」


「いや~ちょっとヒミツ多き男っていうのに憧れていたんですよ。ミステリアスでカッコいいでしょ」



そんなふざけた理由を並べる。が、フィーネはそれを疑っているようだった。


正直な話、違う職を選べば隠す必要もないし意味もない。だが、セリムにとっては力が全てであり、何よりもその職がまるで自分を差しているようで惹かれた。




異端者・異端児:神に異を唱えるもの。

        専用スキル:呪印(カース)

             :正統破壊(ルールブレイク)


呪印:自身のステータスを三倍にする。≪約五分≫ただし、纏衣などの身体強化系パッシブ系は除くスキルの使用は不可になる。


正統破壊:一定時間一定範囲内で全ての魔法及びスキルなど、魔力を使ったものを無効にする。≪約五分≫正統破壊の効果の中で唯一呪印だけが発動可能。




その瞬間、新たなスキルが加わる。




名前 セリム・ヴェルグ

年齢 :7歳≪見た目精神年齢ともに15歳≫

種族 :人族

1次職 :異端者

2次職 :異端児

レベル :30

体力 :2500→3500

魔力 :2000→3000

筋力 :3000→4000

敏捷 :1950→2950

耐性 :2700→3700


スキル

神喰ゴッドイーター  LV2】

剣技  LV6   

纏衣まとい LV9  

【筋力強化   LV7】 

【拳技  LV6】  

【命中率上昇 Lv6】 

【体力強化  Lv3】  

【敏捷強化  Lv3】  

【耐性強化  Lv1】  

【魔力強化  Lv2】  

【硬化  Lv3】 

【気配遮断  Lv3】 

【気配感知  Lv1】

【咆哮  Lv2】 

【火魔法  Lv2】

【水魔法  Lv1】 

【風魔法  Lv1】 

【白魔法  Lv1】 

【暗黒魔法  Lv1】

【嗅覚上昇  Lv2】 

【毒液  Lv2】 

【呪印 Lv1】 new

【正統破壊 Lv1】 new

隠蔽  Lv10 max≪魔道具≫


【】の中身は隠蔽スキルにより視えません。





呪印。


このスキルはほぼ奥の手と考えていいだろう。正統破壊と組み合わせれば大抵のものには勝てるはずである。しかしここまで強力で敵を潰す事に特化と言うか偏っている力ならば代償があると考えるのが通りだろう。



(まぁ、これからの事を考えれば少し身体を犠牲にするくらいで済めばどうってことないと思うが…)



こうしてセリムは己の象徴ともいえるジョブに付いたのだった。


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