第5話 Bパート[雨天の追撃]
雨は弱くなっていると思ったが、強くなってきた。
そして雨霧が薄く立ち込める。
車内のフロントガラスからその様子がぽたと音を立て認識させた。
外側が透明で丈夫なシャッターがある車庫の中からも、その様子は伺えた
雨が少しづつ描く白い世界にため息を軽く一つ吐き、エンジンをかける。
相変わらずのエンジン音が鳴り、目の前の車庫のシャッターが開き、上に格納される。
微かな音が出はじめたラジオが80年代のようなノリのシティポップを流していた。
その次に『目的地を設定してください』と自動運転のナビが明るい女性のような、少し高い音声を発して指示を待つ。
せっかく家から遠出でもを近くでもないようなところに来たんだ、
と思ったが、そろそろいつもの学校へでも戻るか・・・と結論を出した。
「よし、それじゃナビ子さん、いつもの学校に向かってくれる?」
『承知いたしました』
とナビに指示すると、その指示を受けるとともに、車の後輪と前輪がゆっくり動き出す。
そして道路の前まで来るとゆっくりと1度停まり、他の車両が通らないことを確認すると、再び発進した。
しばらくして広い庭を持つ家々が集う高級住宅街の道路を抜け、やっと街に入る。
すると何の前触れもなく何かに当たったような、顔が青ざめるような音がした。
車窓から右下を見ると、固形物が転がっていったのが判った。
何らかの破片か何かが当たったのだと一瞬、認識して安堵したが、
それも目の前のデモ隊のような衆と機動隊の衝突の光景には厄介事に変わった。
「迂回しよう、アサクサとウエノで大規模のデモが起こっているって朝のニュースでやってたのを忘れてた・・・。」
デモ隊が後退しては攻めに出ていく光景が目の前で繰り広げられている、緊迫している。
群衆の中に煙幕が投げ込まれるが、それを投げ返したり、また物を投げたりと反撃する。
『ルートを再構築しました』
ナビの地図上に再構築したルートを確認する。
少し遠回りに気がするが、デモからは離れている。
「ナイス!それでいきましょ」
『かしこまりました』
すると、少し離れた後ろのほうで衝突したような音がした。
運転席の隙間から覗くと、黒色の4ドアの乗用車の側面を青色のピックアップトラックが突っ込んでいた。
そしてトラックの中から男が出てくる。
あの男、どこかで見たような・・・?と、そう思いつつ自らも車を降りて外へ出る。
男が拳銃を持って黒い車の傍へ向かい、車窓へ向かって発砲し続ける。
運転手が撃ったのを確認し銃口を下げて、後部座席の窓ガラスを殴って割った。
すると何かのケースを引っ張り上げた。
男はこっちを見た、男はクラブのバーでウルフといた若い男だった。
「あぁ、あんたか。あのときの・・・」
「マキナよ」
「レイノルズだ、ジョウ・レイノルズ。データ泥棒を追っていたんだ」
レイノルズは銃をレザージャケットの懐へしまう。
そして運転席のほうへまわり、傷口から頭を裂いて電脳を奪う。
「・・・んで、戻るの?」
「あぁ、持ち主へ返しに行くところさ。ミス・マキナはその・・・なぜここへ?」
「道を間違っただけよ、というか立ち往生してる・・・かな」
「・・・じゃあ、もう行くよ」
「えぇ、またね」
レイノルズはそう言うと、背を向きトラックへと歩き出す。
わたしも自分の車へ戻り、運転席に座って運転を再開する...。
しばらくして大学のキャンパスへ戻ると、水絵の声がした。
「マキナぁ!見つけた!」
左から声がしたと思ったら左側から水絵とその友達が来た。
「あっ、水絵か~、講義終わったの?」
「終わったの?じゃないよ。そのままいるのかと思ったら、講義2時限もすっぽかしてどこ行ってたの?心配してたんだよ」
「その2時限分は元から受けていないというか・・・」
と言うと、背後に回られお尻を軽く1度叩かれる。
「問答無用!」とつっこまれた。
その様子を珊子さことソフィが笑う。
「おぅって、はははマジで受けっ、水絵ホントに心配してたのよぉ」
ツボに入ったようで
「マキナが!マキナが叩かれてるデース!」
どうしてツボに入ってるんだ二人とも。
水絵が手を引いて
「次はフランス語と映画史1がの講義があるから、いくよ」
「Je t'aime aussi ça.(そういう真面目なところも好き」
「ミズエのそういうトコロもスキだっていってマス」
ソフィがわたしのフランス語を訳した。
「言ってくれんじゃん」
と理解した水絵が微笑んでくれた。
「ほら、そろそろ講義いこ」
珊子が前を行く。
「あっ、じゃあわたしさ、ロッカーから物を取ってくるよ、先言ってて」
「そういって逃げたら許さないからね」
「逃げないさ」
と水絵に言い返してロッカーまで早歩き。
そういえば今月はクリスマスがあるんだっけな・・・。
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