第2話.A パート [ 力の原動 ]
*
「できるよ、そうやってどんな困難にも立ち向かってきたんだろ?だから今があるんだ、自分を信じて」
母の仕事仲間で軍人であるイカロスおじさんは、清楚なお嬢様達の高校へ行くわたしにそう言って後押ししてくれた。
言わば父親代わりでもある。
おじさんは娘のメグがいて、お姉さんのように遊びに来ては面倒を見てくれたっけ。
そして彼は5年前に、わたしはその女子高へ入学した後に火星へと旅立った。
正確に言うと火星では人間・・・まぁあっちの人達からしては地球人と言うべきなのか。
日々、どんな人間でも住めるよう、施設や荒野を開拓していて、まだ数十万人の労働者や軍人、アンドロイドやロボットなどがいる基地が、いくつかあるくらいだとテレビでその様子が稀に放送されていた。
それにもうじき、ターミナルが開くということらしい。
彼はWHOや世界各国の医療機関が設けたシステム、生体認証IDとしてDNAや個人の体内情報を管理するデータベース、
[Hum-se]を人間の精神や能力を管理するAIの一つ、[プロップヘット]により、
素晴らしく完璧に近い人間として選ばれた10000人の中の一人だ。
彼は今どうしているのだろうか・・・。
*
―人間が生まれるのに必要なのはまず、
性染色体XYの女性の染色体とXXの男性の染色体が必要だと聞いたことがある。
現代では医療技術で使われるようになった高度な魔法[染色変換]といった、
染色体を変えることによって女性同士や男性同士でも妊娠するようになっている。
しかしこの魔法を使える者はあまり多くないと言われている。
これは男しかいないとある村の付近の水の性質を採取して、利用する実験もあったが、あまり上手く行かずということもあり、失敗かと思われていたが・・・それに、
そう言った魔法もあるのでこの実験は成功したが、この方法はあまり使われない風潮になっていた。
わたしの母は二人いて、同姓で結婚した。
きっかけが友人の為に人間工学者の道を選んだ千鶴と、イスラエルの軍隊にいた
"カラカル"の女性兵士のマヤ、髪はピンクのロングで男勝り。
出会いはテロがあった後のイスラエルのとある医務室で、テロリストのとの戦闘中で
負傷した女性兵士だったマヤを看護していたと母さんが言っていた。
マヤの左手の義手も千鶴が、作ったものらしい。
*
2045年
―駅近くの公園のベンチ
戦士とナースの出会い・・・うーんロマンティック~
とはにゃ~んとロマンを感じてしまい、一人で妄想してニヤけてしまう。
「マキナ、ここにいたんだ・・・何か、良いことでもあった・・・の?」
「い、いやっ・・・別に!?」
わたしはシズクが来たのを知らずにニヤけを慌てて隠す。
「い、いや~、今日はゴミも落ちてないようだし、いい日ね~」
「多分それは最近"自警団"として暇なときは皆ゴミ拾いとかしてるからでしょ・・・」
「そ、そうね!」
と、わたしは話を紛らわそうとするように焦って返事した。
「ゆ、百合妄想・・・」
とボソッと呟いたシズクに
「こ、こらぁ!」
とまるで脳の中を見られた感じがして、照れ笑いながらツッコミをする。
「・・・たまにこうやって気を抜けるような話をしないと、人の脳が歪んでしまうからね」
「そうね・・・」
実は、これからマードックスの逮捕あるいは暗殺、そして過激派の環境保護団体の解体を遂行する作戦が決まった事になんだか、ため息が出てしまう。
しばらくすると、付近の駐車場にリムジンが通りかかり、停車した。
リムジンの後部の車窓から黒城が顔を出す、リムジンには黒城と執事の女性二人だけだった。
「ホシをどうするにせよ、今がチャンスですわ、さ、いきましょう」
「クロ、その様子だと、準備も整っているみたいね、・・・わかった。」
とわたしとシズクは黒城の自動運転のリムジンに乗った。
リムジンの内装はホログラムプロジェクターで映し出されるスクリーンや装飾があるものの、そこまで派手な雰囲気ではなかった。
乗車し、席に座ると、黒白がアンドロイドのドライバーに目的地に向かうよう指示する。
黒城の腕の装着型デバイスからスライドされて送られたのは、
黒白が広げたある建物の見取り図とその写真、築数十年は経っていそうな、
街中にある小さい廃ビルだ、その外にはスクラップの山が所々にある。
そこが恐らく、ホシであるマードックスがいる建物というわけだ。
「早速ですが、今回はアローヘッドのエージェント部隊と公安局との協力により、
3部隊の突入からリーダーのマードックスと手下の逮捕、あるいは殺害を行います」
ふとわたしは、写真に所々、赤と青の丸のマーカーがされているのが気になった。
「これに書かれているマーカーは・・・?突入口か?」
「赤はエージェント部隊が突入するのに通るルートですわ。青は、向かいの建物に配置されているスナイパーが援護してくれるという、公安側のお達しです。
それと、強襲なので光学迷彩を使用しますが、スナイパーや他の部隊からは迷彩使用時でも、味方をスポットして、青いシルエットとして表示できるので、誤射の心配はありません」
「少なくとも"第三勢力"にならなくて助かったな」
とシズクはそう呟き、
車内にあったドリアード社のリボルビングクロスボウを組み立て、
弾薬の強麻酔ダーツを込めていた。
「おや?通知が・・・」
黒白が携帯端末を見ると、
「今回の事件の被害者リストに、[緑光 花織」と・・・」
黒白が名前を読み上げた瞬間、わたしはある高校時代のクラスメイトを思い出した。
ネットのニュースや詳細を見ると、射殺され巻き込まれたようだ・・・
「花織・・・この子、知ってる・・・同じクラスだった子・・・
大学に行ってるって先月に会って話てたけど」
友人が殺されたと・・・そう思うとわたしの左手に力が入り、少し震えている。
*
― しばらくすると、目的地近くの商店街付近の路地に停車した。
わたしたちは車内で、[ギルド]登録者ヴィジランテのオレンジアーマーベストと、
ローギバーシステムでわたししか使えないようになっている、
スタンガン着きAK-12ライフルとH&K P30ハンドガン、スタンバトンを装備した。
「マキナ、これを忘れていますよ、今回はノーキルでお願いします」
と黒白がリボルビングクロスボウを渡してきた。
「ありがとう・・・よし、いくぞ」
とわたしたちは降車し、一列になり駆け足で路地を駆け抜けた。
駆け抜けた先には目的の廃ビルが見えた。
[カナミア商店]という看板がその入り口の上にあった。
そのとき、わたしたちの反対側の通りに警察車両が見え、
そこから赤いレーザーサイトの光が、わたしたちに向けられている。
「撃つな・・・」
と向こうから声が微かに聞こえた。
そしてレーザーサイトの色が、赤から緑に変わった。
レーザーが廃ビルの方を向いた、味方の警察隊のようだ。
上空にヘリが1機通る、アローヘッド社のヘリだ。
これを合図に、わたし達は敵陣へと踏み込んでゆく・・・。
"仕事"の始まりだ。
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