第3話 神隠しに遭っていた私。

 それがどうしたことか三年生に上がる前、お父さんが「学校の寮に入るか」と聞いてきた。

「へ?」(どういゆこと)

「学校の中に寮と言ってな寝泊りする部屋ができるそうだ、寮に入ると特別に天体観測ができるってことだ」

(ハイそれ決まり!)「それじゃあ毎晩星が見られるの」

「ああきっとそうだ、なんせ学校にずっと泊まりっぱなしだからな、まあ土日くらい帰って来くればいい」(だましたな、毎日じゃなかったぞ、でも勝手に毎日見ていました。。。)

「お家に帰らないでご飯とかお風呂はどうするの」

「心配いらん、寮で朝ごはんも晩ご飯も出るからな、お風呂もでっかいのが有るそうだ、寮ってのはそんなところだ」

私は毎晩天体観測ができるのと、母から逃れられるとの思いで即行く気になった、どんな部屋かも気にもせずに。

 やっぱり母は反対だった様だけど、子供を気にせず残業できるとか、泊りのイベントも今までは断っていたけど恐縮しながら断らなくても良くなるとか(天文館だから星の観測会が月に一回二回とある)、子供が早く自立するとか、安い借家もあって貯金が貯まれば家を建てようとか父にいろいろ言われて渋々OKしたようだ、土日は絶対家に帰ると言う条件付きで。


私が寮に入ると同時に家も青空市のアパートから三日月町の町営住宅に引っ越すことにしたらしい。

 その引越しの用意をしているときに色紙をいれてる額が落ちて中から一枚の紙が出てきたのをわたしが見つけた。

 それにはこんな事が書かれていた。

 被検者 蒼井 伊佐宵  (三歳)

”心身ともに異常は診られません、ただし幼少期よく起こることで夢と現実の区別ができておりません、これは多くの子供にみられる事項ですから今の年齢では心配することではありません。但し数年間は半年ごとに検診されることをお勧めいたします。

 ***病院 院長 *****  


 「おかあさんこれ何?」と母親に聞いてみた。

 「えっ何?」

 「額の中に入ってたみたい」と言ってその紙を母に渡す。

 「えっ」と言ったきり固まってしまった。

 「どうしたの?」

 「、、、あ、、えーとなんだったかしら、、あら?思い出せない、、病院で検査をしてもらったみたいだけど、、、全然記憶にないわねえ、お父さん帰ったら聞いてみて」



 その夜私は父さんと銭湯行く途中で聞いてみた「友達の額(色紙に<きみはきみ ぼくはぼく されど仲良き>って書いてあったからそう呼んでいる)の中に心身共に異常無しって書いたものが出てきたけどお父さん知ってる?」

「おっ、ああ、あれかまだ置いていたのか母さんは、あれはなあ、、、お前が三歳のころ一時いっとき姿が見えなくなってな、、、ずいぶん探したが夜になっても見つからなかった、警察や消防の人たちも探してくれたが見つからず、夜中は俺たちと天文台の人たちだけで町の中をうろうろ探し回ったが手がかりさえ見つからなかった。

 ところがだな、朝になって警察から連絡が入ったんだ、竹の子山で見つかったてな、命に別状が無いって聞いた時には、、」

 お父さんは黙ってしまった、顔を見ると涙をこらえているのか苦いものを食べた様な顔をしていた。

 「あっごごめんなさい、わたしそんな事してたんだ、全然覚えてなくて、、竹の子山って?」

「竹の子山知らんか、遊園地の裏の山だ、香具山とも呼ばれてるな、それに三歳のころの事覚えているやつなんか滅多にいねえぞ、お前のせいでもないし、母さんのせいでもない、誰かがお前を連れ去ったんだ、一人で竹の子山まで行けるはずないからな、母さんなんか寝込んじまってな大変だった」

「でもおかあさん覚えてないって」

「一種の記憶喪失だ、辛すぎて頭がおかしくなってたのかもしれん、覚えてなくてよかったんだろう、思い出したら後悔ばかりしてるからな、母さんは」

「んっ、えっと香具山香具山、あっ竹がいっぱい生えてた?、、あれ、思い出した?かな、山の方まで行った事ないのに、、」

「そうあちこちに竹藪がある」

「えーとそれでね、そうそう月が嘘みたいに大きくて吸い込まれそうで、、、それだけ後は、、思い出せない」

「誰か居なかったのか、手を引かれたとかおんぶされたとか」

「誰も、、居なかった、気が付いたら山の中みたいな所にいたの、それもほんの少しの時間、すぐに眠ってしまったのかもしれないけど」

「そうか、、まあ無事だったし、いまさら思い出しても犯人を捜してくれるかどうかも怪しいしな」

「いや、、そうじゃなくって、、誰もいなかったと思う、犯人なんて居なかった、きっと何かを追いかけて山に入ったんだよ、、覚えてないけどそんな気がするの」

「しかしなあ、誰もお前が(天文館の)玄関を出て行ったところを見ていないし、、小さな子なら一時間位かかるかもしれんぞ遊園地に行くまでに、こっち側から上がる道が有ればもっと近いんだが有るかどうか分からん」

「多分あるんだよ、でなきゃ遊園地にに入れないでしょ、親はいないか聞かれて止められてる筈、それに5時か6時くらいで中に入れなくなるよね」

「それがおそらく、三時ごろ居なくなった、閉門に間には十分間に合ってるし、暇でおしゃべりしていて気が付かなかったかもしれん」

「そう、、かもしれないしどうやってそこまで行ったのか分からないけど、ずっと一人だったと思う、そこに着くまでは」

「着いた場所に誰かいたのか」

「初めは気が付かなかったけど何人も子供がいた、気が付いたら居たの、やって来たんじゃなくて初めからそこに居たって感じかな」

「子供が居たのか?何か言ったのか」

「言ったような言わなかったような、だけど怖くはなかった、私がここは何処って聞いた気がする」

「それで」

「それだけ、月と思ったものが月じゃなかったのかだんだん大きくなってまぶしくなって吸い込まれそうって思った、それで目が覚めてああ夢見てたのかって思ったら、朝になってて知らない場所で知らない人がいたの、お腹すいたって言ったら飴をくれて、おばさんだけ残っておじさんは急いで走って行ったの」

「警察に知らせに行ってくれたんだな、よく思い出したな」

「うん、今まで全然頭に残ってなかったのに、おかしな話だね、UFOにでも連れ去られたのかな」

「んー」

「どうしたの」

「母さんも覚えていない、そのくせその後だ、お前の事かぐや姫と呼び出したのは、まあ見つかったのが香具山ってことだけは頭の片隅に残ってたのかもしれないが」

「あー思い出しかけたときに一瞬お母さんの顔が浮かんだの、そうお母さんの声で起こされた、伊佐宵早く帰って来なさいって、気が付いたら知らない人だったけど、お母さん山には来なかったの」

「寝込んでた、あさ声を掛けたがうんともすんとも返事がなくて相当参ってる様で連絡を貰うまでそっとしておいた、そうかお前を探しに行ってたのかもしれんな心だけが、そして見つけて誰かを呼んだのかもしれん」

「ま、まさか、、、」

「連絡を受けた時にはお前はすでに警察署に連れて行かれてたからな、山に行ったのは翌日お父さんだけ警察署の人と見つかった場所まで行ってきたよ」

「何か分かったの」

「全然、ここで眠ってたってことくらいだ、竹やぶの中で見つけた人はいつもなら通らない場所だったと言ってたそうだ、何かに引かれるように足が進んだとか、普通なら子供が居るなんて気が付かないような場所だった」

「やっぱりお母さん?すごいって言うか、怖いって言うかそんな力が有ったの?」

「わが子の一大事だ、火事場のバカぢからなんて比べものにならない力が有るのかもしれん、母親にはな」

「そう、、なのかな、それで今でも私を離したがらないのかな、ねえその場所へ行ってみたい、今度連れて行って」

「ああそうだな、休みが合ったら行ってみるか」

「お母さんも行くかなあ」

「いや黙っていこう、変に思い出されるとどういうことになるか分からん、お母さんに言うんじゃないぞ」

「あっああそうだね、そっとしておいた方がいいね、(着いたから)また後で」

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