邂逅

「っ!」


 粘っこい視線を感じて振り返る。しかし、雑踏に紛れてしまったのか、視線の主がわからない。

 歯痒くて、思わず唇を噛んだ。


 ここ最近、正体不明の視線が付きまとっている。

 ふとした拍子に他人に向けるような、気紛れな視線ではない。

 対象をじっと観察するような、気味の悪い、後に引くような、ドロドロとした感触を覚える、視線。


 探しだして、問い詰めてやる。





 そう思い立って、かれこれ1週間が経った。悲しいかな、視線の主は未だに見つからない。

 それどころか、視線を感じることすらなくなってしまっていた。


 ストーカーなら捕まるまで根性見せろ、と誰に言うでもなく悪態を吐く。


「げっ」

「っ!」


 声がして、

 視線を感じて、

 振り返る。


 冴えない顔をした少年と目が合った。





 これが、彼との出会いだった。

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