後日談短編10:もふもふ

「わぁ、可愛いなぁ……」

アルルにはいなかったであろう動物を見せてくれるというので、ショウタは意気揚々と応接間にやってきた。ショウタの家では犬と猫を飼っていたが、この蝶国では他にも多種多様な動物が家庭で飼われているのだという。牛、豚、鶏、ヤギや羊は家畜として勿論のこと、愛玩動物として小鳥や兎などもを飼うそうだ。

「これはモルモットという動物です。野菜の端くれなんかを食べるので、お金もかかりません。原産国は蝶国よりもずっと遠くの国ですが、飼いやすいペットとして、世界中に広がりました」

もるもっとという動物は、ネズミに似ているがそれよりも大きく、毛がふさふさとして色鮮やかだ。アベルが個人的にペットとして飼っているようで、クロという真黒な毛並みに白い筋が入ったものと、チャチャという全身茶色のものを連れていてくれた。この二匹の他にももう三匹いるのだという。


アルルには狼、兎、鹿、山猫、熊、猪、イタチ、狐と狸などの哺乳類が生息している。ペットとしては猟犬や番犬としての犬や、移動手段としての鹿、ネズミ対策で猫などが主流だ。どれも生活に必要な動物として飼われており、心が癒されるためだとか、愛でるためだとかいう理由で飼うというのは新鮮だった。

「わたしも仕事が忙しいので、いい加減ペットは卒業したいのですが、如何せんストレスが大きすぎて手放せないのです」

この間は円形脱毛症になったとかで、まだ26なのに若禿げが始まるのではないかと真剣に心配していた。

「そもそも蝶の一族が文官の仕事をやっている時点でおかしいのですよ。これもあれもバカ兄がいつまでも嫁をもらわないせいですね」

城では文官と武官と下働きの三種類の者がいるが、たいてい武官は蝶の一族、文官は外国人の妻たちが務めているのだという。文官のような、一日中机に向かっている細かな作業は、本来蝶の一族には向かないそうだが、ファロが信用のおけない者を側近にするのを嫌がり、カインとアベルのどちらかが大臣職を受けるように勧めたのだという。アベルはカインと喧嘩でけりをつけ、あっさり負けたので、大臣として働くことになったのだとか。


「アベルが先に結婚して、奥さんに仕事任せるってのは?」

「兄より先に結婚するつもりはありません。兄も何だかんだ言って、国王にお世継ぎが生まれるまでは結婚しないかもしれません」

だからしばらくはこの生活なのだという。国王は何かと理由をつけて仕事を抜け出すことも多いが、アベルは逃げ出すことができないので、ストレスは溜まる一方だという。そんな時この愛くるしいモルモットをなでたり餌をやったりしていると癒されるのだとか。

重症じゃないか、と心からアベルに同情したショウタは、ファロに進言して仕事を軽くしてもらおうと密かに誓った。


しかしモルモットは本当に愛らしく、毛がふさふさしていて癒される。アベルに人参スティックをもらい、そっと差し出すともしゃもしゃ食べ始めた。

「かわいいな~」

小さい体で一生懸命食事したり遊んだりしているのが愛らしい。

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