後日談短編5:護衛兵のぼやき2

護衛の活躍は寝室とダイニングに限らない。そう、入浴中という一日の内で一番丸腰になる時も、護衛は欠かせないのだ。なにせ剣をもって風呂に入るわけにもいかないし、シャンプーしているときにうっかり敵襲があっても、目も当てられない……じゃなかった、開けられない。ここはやはり護衛の出番である。


「いや~、極楽極楽~♪」

アルルでは温泉に行くとき以外、湯につかることがなかったというショウタは、入浴が一日で一番大好きな時間だそうだ。湯につかると一日の疲れがとれるのだそうで、長い時間をかけてゆっくり入っている。そのショウタが安心して湯に入ることができるように、我々護衛兵が湯殿の前で警護しているのだ。

と、その時。


「おい、まだショウタはいるな?」

猛ダッシュでこの国の頂点に君臨する国王が駆け込んできた。

「は!まだ入浴中であります!」

「よし、御苦労」

何食わぬ顔で、国王は平然と湯殿にはいって行く。勿論、国王を止められる者はここにはいない。


これはもしやと思っていると、案の定悲鳴が聞こえてきた。

「うわああ!な、なんでファロがここに!?」

「たまには愛する妻と風呂を楽しもうと思ってな」

「おい、あんまり寄るなよ!ファロいつもエッチなことするじゃんか!」

「いやいや、俺はお前の背中を流してやろうと思ってな」


また国王はあの手この手でショウタに近付いているようだ。騙されちゃだめですよ、というテレパシーは、どうやら届かなかったようである。

「ほんとに?背中流すだけ?」

「ああ、もちろん」

ああ、人のいい少年はどうやら腹黒い男の餌食になったようである。


「あっ……ちょっと、どこ触って……!」

「どこって、体を洗ってやってるだけだろ?ん?何でこんなところ尖らしてんだ?」

「あ、あっ、やだ……そこ、触んないでよっ」

「触んなきゃ洗えないだろ?隅から隅まで綺麗にしないと」

あとはもう手練れた男のやりたい放題である。湯殿からは可愛らしい嬌声が断続的に上がって来た。


「あっ、あっ……ん、ねぇ……っ、じらさないでっ。してよぉ、もっとちゃんと」

「ん?洗う以外のことはしないんじゃなかったのか?」

「やだっ、がまんできないっ!……してっ、もうきてよぉ……」

これはまた、ショウタが上がってくる前に席を外さなければならないパターンかもしれない。二人組の護衛兵が目くばせして立ち去ろうとしたとき。


「お、おい、お前らっ!氷持ってこい!」

この国で一番偉いはずの男が、慌てて、しかも全裸で戻ってきた。

「ショウタが湯あたりしたっ!」

何事もやりすぎは良くない。

護衛兵はあきれ顔を隠しもせずに、氷をもらいに調理場まで走ったのだった。

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