後日談短編3:ショウタの冒険

ショウタは元来活発な少年である。出身村アルルの原生林では、毎日のように木から木へと飛び翔り、鹿狩りや兎狩りをしていた。釣りも得意だし、どんなに難しい場所に生えているキノコだって逃したことはない。

だから蝶国に来ても、そういった本来の特技を活かして動き回りたいと思っていた。でも、一人っ子かつショウタ以外に妻を取る気のない現王だから、「お世継ぎが先です」と執事長や長老たちが許してくれない。


「あー、何かアブナイことしたい」

「何です、それ。犯罪者にはならないで下さいよ」

ショウタの真剣な独り言に、アオが眉根を潜めた。アルルに居たときは飲んだことのないコウチャという飲み物も、こーひーという飲み物も、だいぶ上手に淹れられるようになった。そしてショウタが蝶国に来て以来の大好物、くっきーを皿に盛りつける。


しかしショウタは暇なのだ。お茶も悪くはないが、何かスリルのあることがしてみたい。ショウタだって男だ。蝶の民族ほど戦いへの渇きはないが、いっぱしの男らしくヒヤヒヤすることを偶にはしてみたい。そう、たとえば……

「冒険だ……!」

強い意志をもってガタリと立ち上がったショウタに、アオは面倒なことになったと眉を顰めた。


「そう、冒険だよ、アオ。冒険しよう!」

「……お世継ぎが先ですって、どうせ止められますよ」

「それは外出の話だろ。この城ん中を冒険するんだっ」

いいだろ、とキラキラした目を向けると、アオは仕方なさそうにため息を吐いた。

「……分かりました。その代わり、俺も行きます」

「やったー!じゃあまずはカーテンで窓から脱出しよう」

「……」

まさかそこまで本格的に冒険をしようとは思っておらず、アオは一瞬何も言えなくなった。


「まさか、護衛を連れて行かないつもりですか」

「当たり前じゃん、護衛連れてったら冒険になんないだろ」

アオはまたはぁとため息を吐く。ショウタはアオより一つ年上なのだが、精神的にはずっと幼い。それでいつもアオが苦労する羽目になったのだが、この半年で色々と苦労してきた幼馴染のために、一肌脱いであげるべきだろう。

「分かりました。じゃあ動きやすい着物を持ってくるから、ちょっと待ってて下さい」


一端退室したアオは、部屋の外にいた兵士を呼んだ。

「いいですか、私が帰ってきてショウタが着替えたら、我々はカーテンを使って窓から脱出します。ショウタが冒険をしたいというので、彼にバレないように護衛して下さい」

「……え、はっ、かしこまりましたっ」

教育の行き届いた蝶の兵士は、何だそれとも、止めろよとも言わず、二つ返事で了承したのだった。

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