後日談短編2:幸せにする作戦

幸せにする作戦

「空っていいもんだよな~。でっかいし、見てるだけでスカッとする」

原生林出身のショウタとアオは、空の広さをここに来て初めて知った。太古の巨木が生い茂る原生林には、ほとんど日が入らない。だからアルルの民はみな肌が白い。髪も瞳も薄い色が多い。ショウタは族長の一族なので白髪だが、アオは金髪に碧眼だ。

唯一日が差し込むのが村の中央にある集会所だが、それだってたかが知れた空の形だったんだということも、半年前までは知らなかった。


「そうですね。……アルルの森が恋しくはならないのですか」

「んー、ちょっとだけ?でも二度と里帰りできないってわけでもないし……、十分幸せ」

そういってへへ、と笑うショウタは、やはり強い。心が強い人間なんだなぁとアオは思った。里帰りが許されるのは、世継ぎを産んでからでないと許されないしきたりだと聞いている。それまでこの国の中に閉じ込められているというのに、ショウタはそのことを柔らかい心で受け入れていた。

「アオは?帰りたい?」

「いいえ、あなたの帰るところが、わたしの帰る所です。あなたが幸せならわたしも幸せです」


人質としてショウタが村を出ると決まったとき、ショウタはお付きは要らない、1人で行くと言い出した。自分以外の誰にもアルルを捨てさせないために。しかしアオは一年かけて一緒に行く事を承諾させた。付き人は男であれば1人だけ許されていたし、何より幼馴染のショウタを1人で行かせたくなかった。

結果的にはそれでおばばも村のみんなも安心した。両親や兄弟は悲しませたかもしれないが、最終的にはショウタに一生を尽くすようにと励ましてくれた。


「俺の今の幸せはアオのお陰でもあるよね。ほんと幸せもんだな、俺」

しかしアオは知っている。ショウタは自分の心の強さのゆえに、今幸せなんだということを。アオの貢献なんて僅かに過ぎない。あの太々しい国王であっても、ショウタの幸せ全部をつくっているわけではない。ショウタが幸せなのは、ショウタがすべての事を前向きにできる強さをもっているからだ。そして彼は、周りの人を、自分の何倍も幸せにしている。


「ああ!いっけね!」

突然ショウタが叫んだ。あまりのことにお茶を取りこぼしそうになる。

「俺ばっか幸せでもだめじゃん!俺はファロのお嫁さんなんだからな!ファロを幸せにしてやんないと!」

ショウタがにへにへ笑っているだけで、あの国王は天にも昇る幸せを噛み締めそうなものだが、ショウタは何やら息巻いている。

「俺も男だ!愛する人を幸せにするのが務め!」

よし、作戦会議だ!と何やらやる気のショウタを引き留めることはできないだろう。やれやれ、とアオはため息を吐く。そして可愛い上司のために、温かなお茶を用意したのだった。

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