第21話

「いよいよ明日かー」

「緊張するか?」

それには首を横に振って答えた。


明日は朝早くから色々と準備があるので、晩餐会は早めにお開きとなった。アオももう下がらせ、明日に備えさせている。湯あみをして寝室で本を読んでいたら、同じく湯浴みを終えたファロが帰って来た。当然のように腰を引き寄せられ、読もうとしていた本は諦めて閉じる。

「なぁ、明日お披露目だしさ、今夜は早く寝ようよ」

初めて体を繋げた日以来、毎日休まずに励んでいるのだ。大事な日の前くらい休んだっていいではないか。言外に断りを入れたつもりだが、バスローブの紐をあっさり解かれた。

「努力する」


本人にとっては譲歩のつもりでも、自分にとっては全く嬉しくない一言が返って来て、その口約束が守られることをひっそりと願う。

「……っ、あ……」

ファロ好みの体は、今では夫に触れられただけですっかり燃え上がる。大きな手が痩せて若干骨を浮かせる体を這って行き、胸の尖りを摘まみ上げた。そのまま指でやさしく擦られると、じわじわした心地良さで熱い息が漏れる。


「……ふ、ぅ……」

それだけで兆し始めたところを掴まれると、思わず喉奥から声が漏れた。更に腰を引き寄せられて、暑い胸板に頭を寄りかからせる。肩を抱きこまれると、頭上から小さな笑い声が聞こえてきた。

「嫌がっていたわりに、その気じゃないか」

ゆるゆると擦り上げられて、手の中のものが可愛がられる予感に震えた。あからさまな反応は隠しようもなく、恥ずかしさに耳まで熱くなる。

「……だって、ファロが、触るから……」

「責めてない。俺の嫁は夫に従順だと嬉しくなっただけだ」


完全に立ち上がって全身に熱が回ると、後ろが物欲しそうに緩まり始める。この二か月で散々嬲られた体は、もう夫のものを受けいれて食い絞めなければ満足できない体になっているのだ。

「ん、ゃ……」

願い通りに太い指を一本差し込まれると、期待で頭が煮えたった。待ち望んでいた後ろの隘路は、持ち主の意志に反して与えられたものを上手そうに食い絞める。

余裕がありそうだと見て取ると、ファロは躊躇いなく二本目を差し入れて来た。これも難なく受け入れ、緩やかな突き上げが毒を回すように快感を体全体に運んでくる。


「ふっ、ぁ、いっ……きもち、いっ」

快感を素直に伝えれば、もっと気持ちよくしてもらえるということは、この二か月間で嫌というほど思い知らされた。変に意地を張れば、泣くまで焦らされることは学習済みである。

愛しい男の首に腕を回して縋りついたときに、ふとファロの指の動きが止まった。険しい顔で辺りを見回すファロを、半分熱に浮かされたまま見つめる。

「あ、ふぁろ……ね、はやく……」

もっと気持ちよくなりたくて、無意識に腰を擦りつけると、やがてファロが思い直したように寝具の上に倒してきた。着衣は乱さずに、滾って準備の整った自分の一物だけを取り出し、期待でヒクつく後口に押し当ててくる。


「……誰かこちらを窺っている」

「え?……ぁ、やああぁああっ」

覆いかぶさってきた拍子に、耳元に言葉を吹き込まれた。しかしその意味をよく判断できないままで、逞しいものに入り込まれる。

ずん、と奥まで突き入れられ、一瞬気が遠くなった。真っ白な頭の片隅で、腹にかかった液体の感触から、何となく自分がイッてしまったのだと知る。

「ぅ、あ……っ」

「気づかないフリをしてろ。殺気はないから、こちらの様子を窺っているだけだ」


一瞬遅れて、その意味を理解した。誰かよそ者がこの城の、しかも王の寝室の側まで入り込んで、こちらを偵察しているというのだろうか。

「え、でもっ、それっ……ん、や、ぁっあっ……」

ファロとこんなことしてるって、公然と見せつけているようなものではないか。たちまち恥ずかしくなって抗議しようとしたが、奥まで突かれると声が言葉にならなくなってしまう。

「お前の艶姿でも見せつけてやれ。その内うちの兵士が捕えるだろう」

王の寝所を守るのは、蝶国一の精鋭部隊、近衛隊だ。恐らく侵入者にはもう気づいていて、捕まえるのも時間の問題だろう。

だから精々ショウタの感じ入る姿でも見せて、気を散らせてやろうという魂胆らしい。


「おい、おまえ……な、あっ……」

あんまりだと文句の一つでも言いたいが、逞しいもので内側から揺すられるとままならない。段々正常な思考まで靄がかって、早くイキたいとしか考えられなくなる。

「あ、も、俺、だめっ、いくっ……」

真っ赤な蝶が浮き出ているだろう夫の背に手を回して、爪を立てて縋りついた。

全身を震わせてファロともども熱を放出するのと、どこからか騒がしい音がする。


「お前の艶姿を見せてやったんだ……ただでは返さないようにしないとな」

見せてやったんじゃなくて、見せつけたんだろうという訂正文句は、荒い息の中に消えてしまう。逞しい腕に引っ張られて、胡坐をかいた上に座らせられると、自重でファロの逞しいものを奥深くまで受け入れる羽目になった。


「あぁ……っ」

首を仰け反らせて喘ぐと、その白い首筋に口づけられる。

「今度はゆっくり楽しもうぜ……」

「努力する」という言葉は、すっかり忘れてしまったらしい。

恨めしそうに見つめてもどこ吹く風で、やっぱり散々泣かされる羽目になった。


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