第25話

「久しぶりだね、ショウタ」

晩餐会になると、先ほど神殿で見かけた義兄がすぐさま話しかけてきた。

義兄はショウタがアルル村を出て来たときと変わらず元気そうだった。

アオも久しぶりに家族に会えたのが嬉しかったのか、彼にとって実兄に当たる彼にピッタリと寄り添っている。


「あんな格好して入ってきたからびっくりしちゃったけど、衣装直したんだね」

太ももから下を派手に破いた衣装を着て帰って来たショウタを見て、アオは文字通り卒倒しそうになった。しかし馬車の中に破った部分が残されていると知ると、大急ぎで縫い直してくれたのだ。

おかげでファロにも晴れ姿を見せてあげられたし、客にも失礼が防げた。ショウタが賊を迎え撃ったがために遅れたこと、衣装が無残であったことは自然と広まり、むしろ強くて勇敢な嫁が来たと高い評価を得た。


「義兄さん、来てくれて本当にありがとう。来るなんて思わなかったから、びっくりした」

「本当はお義父さんが来るはずだったんだけどね、ギックリ腰をやっていて……。僕が代わりに来たんだ」

義姉は母の次に族長になる立場だから、その婿である義兄が来たのだという。

「でも、その理由だけじゃなくて……僕はショウタの結婚式に来たかった。ずっと気にしていたんだ。君が……サツキのことで責任を感じているんじゃないかって」

「うん……」

気にしていたのは本当だ。今までは気にしていないフリをしてきたが、アルルから離れた今は、無理に取り繕わなくていいのだと思える。


「サツキは、君に幸せになってほしいと願っていた。だから、この国に来ることになったときに、君が自己犠牲を払おうとしているんじゃないかと思ってね。アオがお供に行くことも許した。でも、安心したよ。君の幸せそうな顔が見れて」

婚約者を死なせた弟に、こんなにも優しい言葉をかけてくれる。自分もつらい思いをしたのに、一切攻めることなく。

そればかりか、義兄はずっと姉の死に責任を感じている自分を、気遣ってくれていたのだ。

「……ありがと、義兄さん。俺、ほんと幸せだよ」

「いい報告ができそうだ」

義兄もずっと、10年前の事件が気がかりだったのだろうと思った。今、ようやくそのわだかまりが解けたのだ。

その時になってショウタも気が付いた。姉の死を乗り越えられない自分の姿が、アオや義兄や、家族を過去に縛り付けていたことを。人を幸せにするには、自分も幸せでないといけないんだって、ことを。


義兄は晴れやかな気持ちで蝶国から帰って行った。

アオとショウタは、いつまでもいつまでも、その背中を見送った。

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