第9話

寝台の上にそっと横たえられると、ファロがじっとショウタの顔を見つめてきた。片方の手が、そっとショウタの頬を撫でる。

「……何故だろうな。アルル村で会った時から、お前に引き付けられる」

その目は本当に不思議なものを見ているようだった。世界最強の戦闘民族の頂点に立つ者が、戸惑っているような。

堀の深い精悍な顔立ちが、そっと近づいてくると思ったら口づけられていた。ぴく、と震えたのを宥めるように、髪をなでられる。まだ少ししっとり湿った白髪が、さらさらとシーツの上を流れた。


「お前、キスもしたことないのか」

体を起こしたファロ王が、意外そうに問いかけながら、着ていた服に手をかける。これはばすろーぶと言うらしい。

「……アルルは未成年交際禁止だから」

小さい村だ。全員の顔も名前も知っているのに、約束を破ってこっそり交際するものもいない。暴露すると、ファロ王はちょっと楽しそうな顔をした。

一枚しか身にまとっていないものを、あっという間に脱がされた。この場には男しかいないわけだから、別に恥じらう必要もないはずなのに、状況がそうさせるのか顔が赤くなる。ファロが着衣を乱していないので、自分一人だけ裸でいるのも恥ずかしかった。

一体自分がこれからどうなってしまうのか、全く未知で震える。


「初めてのくせによく俺を抱こうとしたな」

ファロが首筋を唇で辿って、耳元にささやいてきた。それだけで何だか厭らしい気分になる。緊張で縮こまっている体を撫でまわし、まだ大人しいショウタの中心にそっと触れて来た。

「……っ……」

そのままゆるゆると擦られると、快感より先に羞恥で叫びそうになる。無意識に横向きになって、視界の端から立会人を追い出した。緩急をつけて擦られ続けると、頭がじんわりするような快感が広がってくる。段々と息が上がってくるのが自分でもわかった。


「緊張しているな。心配するな。全部俺に任せろ」

「あ……」

顎に指をかけられ、顔を見つめられながら微笑まれると、やっと少し安心感が湧いてきた。緊張が解けると、快感も増したような気がして、頭がくらくらする。

ファロは身をかがめると、胸に二つある飾りに吸い付いた。男だから無意味な器官だと思っていたが、弱みを擦られながら同時に吸い上げられたり舐められたりすると、何だかおかしな気分になってしまう。

変な声が出そうになって、喉の奥で慌てて堪えた。しかし息が荒くなることまでは、どうも隠しようがない。

先端や筋の方を攻められ、とうとう我慢できなくなって吐き出した。他人にいかされてしまったという事実も相まって、頭がぼんやりする。


ファロが体を起こし、ベッドサイドの引き出しから何かを取り出そうとしたが、横にいた黒子が制止した。

「陛下、今日はこちらの方が」

それまで一言も口をきかなかったので、急にその存在を思い出して恥ずかしさが込み上げた。しかしファロは特に気にも止めてないらしい。平然と小さな壺をうけとる。

「……そうだな」

ファロが指で中の香油のようなものを掬い上げると、ふわりと甘い香りが広がった。アルルでは薬の調合をすることも多かったので、どこかでこの匂いを嗅いだことのあるような気がする。


しかしファロがぐっとその指で奥のすぼまりに触れてくると、そんなことはとても考えられなくなってしまう。顔から火が出るくらい恥ずかしかった。

「な、なぁ……ほんとに?本気で?」

「心配すんな」

天国を見せてやる、と耳に直接吹き込まれた。いや、そういう心配をしてるんじゃないんだけど。

指が一本差し込まれるだけで、心もとない気持ちになる。自分が男に犯されるというファンタジーが、色と形をもって実体となっていく。

ファロがゆびを動かす度に、小さな水音がするのに落ち着かない気分になる。まだ細いそれが、こんなに体の中で存在感を主張しているんだとしたら、その先に進んだときどうなってしまうのだろうか。

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