丸い光
光がうろうろしていた。
僕はその、白くて丸っぽい光を目で追っていたが、ややあって飽きた。足音が近づいてきて、いきなり顔を照らされた。
「まぶしいんですが」僕は抗議した。
「済まない。ひとがいるとは、思わなくて」
相手は謝って、丸い光を横へと移動させた。
「君は誰? どうしてこんな処にいるんだい?」丸い光を持っている人は質問をしてくる。「お腹は空いていない? 寒くないのかい?」
僕は黙ってかぶりを振って、立ち上がった。あれこれ訊かれるのは嫌だ、嫌いだ。丸い光を持っている人から逃げたが、そいつは僕のあとをついてきた。
「女の子を探しているんだけれど」丸い光を持っている人は少し大きな声で言う。「髪の長い、ぶかぶかした上着を着た子、見ていないかな」
「そういう子なら、見ましたよ」
僕は意味もなく嘘をついた。
「頭打ったみたい。血まみれで死んでましたよ」
「…………」
光が消えた。
足音が止まる。
僕は立ち止まって振り向いたが、真っ暗なのでなにも見えなかった。かすかな息遣いだけが聞こえてくる。僕は「嘘ですよ」と言おうかと思ったが……、面倒なのでやめておいた。その場から離れる。
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