同じ名前ってだけ
僕はとある芸人さんと、同じ名字だった。べつに、親族でもなんでもない。でも、割と珍しい名字なので、やっぱりこの名前を見ると、みんな、あの芸人さんを思い浮かべてしまうらしい。
教室の中央付近でさんざめくクラスメイトたちが、不意に僕の名前を大声で呼ぶことがある。僕が振り返ると、彼ら、あるいは彼女らは弾けるように笑う。振り返らなくても、笑う。動物園の動物に呼びかけるように、おどけたイントネーションで何度か呼んでくる。で、笑う。僕は毎回、どうしたらいいか判らなくて戸惑う。望まれている反応、というものはなさそうなので、今の処は適当にスルーしている。
僕は、あの芸人さんのように、面白いことが出来るわけではない。ただ、同じ名前ってだけ。同じ名前ってだけで、みんなは僕を呼んで笑う。僕を見て笑う。
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