第139話七言十二句 贈駕部呉郎中七兄

七言十二句 贈駕部呉郎がぶごろう中七兄

時早夏朝帰 閉斎獨處 偶題此什


四月天氣和且淸 綠槐りょくかい陰合沙隄平 獨騎善馬銜鐙かんとう穩 初著單衣支體輕

退朝下直少徒侶 歸舍閉門無送迎 風生竹夜窗閒臥 月照松時臺上行

春酒冷嘗三數盞 曉琴ぎょうきん閑弄十餘聲 幽懷靜境何人別 唯有南宮老駕兄


七言十二句の詩 賀部郎中の呉七殿に贈る。

時はまさに初夏のある日、朝廷から帰宅して一人書斎に入り、思いのままにこの詩を書いた。


四月のすがすがしいこの時期、新緑の枝葉は勢いよく重なり、砂堤は平らにならされている。

良馬に一人でまたがり、くつわもあぶみも静かに歩いてきた。

単衣の夏服に着替えて、身体も楽になった。

宿直を終えて朝廷を出てきたけれど、お供は少なく、家に入り門を閉めれば送り迎えするお客も来ない。

風で竹がそよぐ夜、窓辺に横になる、

月が松を照らせば、楼台に登る。

春の酒は冷たいので、三、四杯をなめる程度。

夜明けには琴を、ゆっくりと十声くらい、かき鳴らす。

この私の深い胸の底、誰が理解してくれるのだろうか。

それは、南宮の賀部郎中どの、あなただけなのです。


駕部呉郎がぶごろう中七兄:白居易と同年の進士。

銜鐙かんとう:くつわとあぶみ。


○長慶二年(822)、長安の作。

○宿直明け、初夏の早朝のすがすがしい気分を詩に詠み、友人に贈っている。


○和歌にも影響を与えている。

にいとどみじかきうたたねの夢(式子内親王『新古今集』

☆風さやぐ竹のよなかにふしなれて夏にしられぬ窓の月かな(藤原定家『拾遺愚草員外』)

○源氏物語:胡蝶

雨はやみて、、をかしき夜のさまもしめやかなるに、人々は、こまやかなる御物語にかしこまりおきて、け近くもさぶらはず。

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