第131話歩東坡

東坡とうば


朝上東坡歩 夕上東坡歩 東坡何所愛 愛此新成樹     

種植当歳初 滋栄及春暮 信意取次栽 無行亦無数     

芳気微風度 新葉鳥上来 萎花蝶飛去 閑携斑竹杖     

徐曳黄麻屨 欲識往来頻 青蕪成白路


東坡を歩く。


朝には、東坡にのぼって歩き、夕方には東坡にのぼって歩く。

東坡のどこが好きなのかと言えば、この木々が成長した姿を見ること。

年の初めに植えて、春の終わりに大きく成長した。

植え方は、適当に場当たりだったので、列などもなく、数もそろっていない。

日差しとともに、緑の木陰は移り変わり、良い香りが、微風に漂っている。

鳥が若葉に舞い降り、蝶がしぼんだ花から飛び立っている。

斑竹の杖を手に、のんびりゆったりと、黄麻の鞋を履いて歩く。

しきりに歩いていることは、緑の茂みが何もなくなった道になったことでも、わかると思う。


東坡とうば:東向きの傾斜地。

※種植:種を植えて育てる。

※滋栄:成長して立派になること。

※信意:心のままに、何ら計画性もなく。

※斑竹:長江中流の斑模様の竹。

※黄麻屨:黄色い麻で作った靴。

※青蕪:雑草が繁る草むら。

※白路:踏み固められて緑の雑草が消えてしまった。


○白楽天にとって忠州は、好きな土地ではなかったけれど、それでも東向きの傾斜地に樹木を植えて、その成長を見るのが好きだったようだ。後に長安に戻っても、この東坡とうばの木々を思い出しているほどである。

○「育てる」「成長を楽しむ」という行為は、心を慰めるものがあるようだ。

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