第113話白雲期

白雲期

黄石巖下作


三十氣太壯 胸中多是非 六十身太老 四體不支持

四十至五十 正是退閑時 年長識命分 心慵少營為 

見酒興猶在 登山力未衰 吾年幸當此 且與白雲期 


白雲と約束をする。

黄色巌の下で作詞した。


三十の頃は、意気が盛んであり、胸中は様々是非を考えることが多い。

ところが六十になると、すでに年寄り過ぎて、四肢が思い通りにならない。

四十から五十までこそが、実にのんびりと過ごせる時期と思う。

年齢を重ねることにより、自分自身の分限を知り、わずらわしいことなど考えず、世間に無理には関わらなくなる。

酒を目にすれば飲みたいという気持ちは確かにあるし、登山をするにしても体力は衰えていない。

幸いにも、今の私はこの年代にあたる。

さて、まずこれから、山に登り、白雲と会う約束をしよう。


※黄石巖:廬山の巨岩。黄色一色のため名付けられた。

※退閑:官を退き閑居する。

※心慵:おっくうになり、わずらわしいことを考えなくなる。

※白雲:隠棲の中の楽しむべき象徴。


○元和十三年(818)、江州の作。

○作詞時は四十七歳。

○過去の栄光と現在の流謫を思い悲しみに沈む詩もあるけれど、こういう希望を感じさせる詩もある。

○読み出せば読み出すほど、興味が湧く詩人だと思う。

○光源氏ではないけれど「旅の友」にもなりそうである。

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