第97話東南行(6)

美服頒王府 珍羞ちんしゅう禦廚ぎょちゅう 議高通白虎 諫切かんせつ青蒲せいほ 

柏殿行陪宴 花樓走看酺 神旗張鳥獸 天籟動笙芋しょうろ 

丸劍星芒せいぼう耀 魚龍電策驅 定場排漢旅かんりょ 促坐進吳覦ごゆ

縹緲ひょうびょう疑仙樂 嬋娟勝畫圖 歌鬟かかん低翠羽 舞汗墮紅珠 


宮廷からは美麗な官服を支給され、その御厨から美味珍味も賜った。

白虎館に通い高邁な議論を重ね、御寝殿の青い蒲に伏して天子に強く諫言を申し上げた。

柏梁台では豪華な宴会に出席、花萼楼かがくろうにまで走って酒食をもてなされた。

鳥獣を描いた天子の旗が立ち、天上の音楽のような笙や笛が奏された。

丸剣の雑技では、剣が星のようにきらめいた。

魚龍の奇術は雷電を走らせた。

幕が開けば、漢王の愛した歌舞団が並び、座席一杯にあふれる歌姫は呉の歌を奉じた。

仙界の音色のように風に舞い、絵にも勝るような麗しさだった。

翡翠の飾りが歌姫の髪から、艶やかに下がり、舞うごとに赤真珠の汗がこぼれている。


※美服頒王府:朝廷の官僚は、天子から季節ごとに衣服を下賜された。

※白虎:後漢の宮廷にあった建物。

諫切かんせつ青蒲せいほ :青蒲せいほは、青い蒲で地面を被った区域。臣下は原則として入れないけれど、白楽天は左捨遺という諫言の職にあった。

※柏殿:柏梁台。漢の武帝が臣下を集めて宴を催した宮殿。

※花楼:唐の玄宗が建てた花萼楼かがくろう

※看酺:「看」は歓待すること。「酺」は天子が振る舞う酒食。

※神旗:天子の旗。

※天籟:自然界の発する妙なる音楽。

※丸剣:鈴と剣を操る雑技。

※魚龍電策驅:ヤマネコの模型が水の中に入り、魚に変化、その後、龍に変身する奇術。

※排漢旅かんりょ:「排」は並べること。「漢旅」は漢の高祖が好んだ舞踏団。

吳覦ごゆ:呉の国の歌。

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