第89話小池二首 其二

有意不在大  湛湛方丈餘  荷側潟清露

萍開見游魚  毎一臨此座  憶歸青渓居


確かに欲しいとは思うけれど、大きなものはいらない。

一丈四方で狭くても、水が慢慢と湛えてあれば問題がない。

蓮の葉が揺れると清らかな露がこぼれ、

浮き草が広がると、その隙間に魚が泳ぐ姿を見る。

この池の前に座るたびに、青い渓流のほとりに住まいをかまえて、ゆっくりと寛ぎたいと思う。


※湛湛:水が深く湛えられている様子。

※方丈餘:四方一丈余り。「丈」は長さの単位、3㍍ほど。

※側:かたむくこと。

※萍開:浮草が開くこと。


○元和一二年(817)、江州の作。

○小さな池に、広大な大自然を見立てる趣向が、当時流行していたとのこと。

○華厳経で示す「一即多、多即一」の思想が影響しているのかもしれない。

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