第83話送客之湖南
年年漸見南方物 事事堪傷北客情 山鬼趫跳唯一足 峡猿哀怨過三聲
帆開青草湖中去 衣湿黄梅雨裏行 別後双魚難定寄 近来潮不到湓城
湖南にむかう客人を送る。
年々、少しずつ南方の事物には見慣れてきた。
それでも、一つ一つの事が、私のような北方からの余所者には、心を苦しめることが多い。
まず、山の中の鬼は一本足で飛び跳ね、峡谷に棲む猿は悲しみなのか怨みなのか理解しがたい鳴き声を三度もあげ、涙を誘ってくる。
今、客人のあなたは、風を帆に受けて青草湖に去っていく。
その衣を濡らし、梅雨の中を旅立っていく。
ここで別れれば、魚も手紙も、途絶えがちになるのだろう。
魚を運んでくる潮も、今では湓城にはのぼってはこないのだから。
※湖南:洞庭湖の南。江州より長江の上流に位置する。
※山鬼:山に棲む魑魅魍魎。一本足の鬼の伝説もある。
※青草湖:洞庭湖の南側にある湖。南から湖水が流れ込み、北は洞庭湖に通じている。
※双魚:手紙
※定寄:確実に届けること
※近来~:海潮は長江の中流にあたる湓陽にまではのぼってこないので、手紙や魚も、届きづらくなる。
○元和十一年(816)、江州の作
○客を送った後、江州に残るしかない白楽天は、南方の風物に慣れてはきたものの、なかなか違和感が消えないようだ。
○海から数百キロ離れた江州に、海の潮がのぼってくるなどはありえない。
そのありえなさに、左遷の悲哀を感じているのだと思う。
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