第34話新楽府其四 海慢慢
戒求仙成
海漫漫
直下無底旁無邊 雲濤煙浪最深處
人傳中有三神山 山上多生不死藥
服之羽化爲天仙 秦皇漢武信此語
方士年年采藥去 蓬萊今古但聞名
煙水茫茫無覓處
海漫漫
風浩浩
眼穿不見蓬萊島 不見蓬萊不敢歸
童男髫女舟中老 徐福文成多誑誕
上元太一虛祈禱 君看驪山頂上茂陵頭
畢竟悲風吹蔓草 何況玄元聖祖五千言
不言藥 不言仙 不言白日升青天
仙界探求を戒める
海は限りなく広い。
真下の深さは底が知れず 四方を見ても広すぎて果てがない。
雲煙のように大小の波が沸き起こる、海の最も奥まった所に
三つの仙山があると伝え聞く。
その山の上には不死の薬草が多く生え、その草を服せば羽が生え仙人になるという。
秦の始皇帝も漢の武帝もその言葉を信じ、方士を使い、毎年これを探し求めさせた。
しかし蓬莱は今も昔も名前として耳に入るだけ。
現実にはどこまで探しても海の
海は限りなく広い。
風はその広い海を吹き渡る。
しかし目に穴があくほど見つめても蓬莱島は見えてこない。
目指す蓬莱島が見えるまではと、引き返すこともできず、
舟の中で老いていく童男と童女。
徐福と文成は、虚言の虜となり、上元夫人と太一神に虚しく祈りを捧げるのみ。
見るがいい。
秦の始皇帝が眠る
そして漢の武帝が眠る
結局は、うら寂しい風が、はびこる蔓草を揺らすのみではないか。
そもそも、玄元聖祖老子の五千言の教えには、仙薬の話も仙界の話もない。
そのうえ、白日昇天の教えなど 全く見当たらないではないか。
※慢慢:果てしなく広がる様子。
※雲濤煙:海から雲や靄のように湧き上がる波
※三神山:東海にある蓬莱・方丈・
※秦の始皇帝と徐福:秦の始皇帝が不老不死の薬草を求めて徐福道士に捜させた故実
※漢の武帝と文成:漢の武帝も道士の文成に騙され、不老不死の薬草を捜させた。
※眼穿:目に穴が空くほどこらしてじっと見る。
※
※上元:上元婦人(道教の女神の一人)
※太一:太一神(天の紫微宮に在る神)
※玄元聖祖:老子の尊称
○秦の始皇帝に漢の武帝も、道士(方士)の虚言に騙され、不老不死の薬草を求させ、結局は普通の人間と同じように土に還っている。
○そもそも、老子の五千言の教えにもないことを信じてしまう愚かさを厳しく指摘している。
○現実世界に向き合わず仙界の薬を求めるなど、天子としてあるまじき行為、無駄な行為ではないのか、白楽天としては「海慢慢」を著し、同時代の皇帝(憲宗)を戒めたとの説がある。
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