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…残る二人を追いかけ、倒して眠らせた場面はカットで。



同じ事しかしてないからね。



そんなこんなで町に戻り…



「た、大変です!魔物に、魔物に…!」


「…あいつらはどうした!?」



先遣隊が倒された感じの演技をして残りの軍人達を誘き寄せる。



そして殴って気絶させ、睡眠薬を口の中に入れる場面もカットで。



…基本的に同じ事しかしてないからさ。



わざわざ似たような場面を何回も説明するのは面倒なんだよね…



つーワケで察してくれると助かるよ。



ピピピ…ピピ…ピ…



…眠らせた軍人達を一ヶ所に集めてるとケータイに着信が。



「…もしもし?」


「程人?その町の近くに待機してる部隊は居ないみたい」



どうせリザリーからだろう…と思ってたら案の定リザリーからだった。



「そうか、ありがとう」


「別に大した事じゃなかったわよ…それで?どれくらい買い付けたの?」



俺がお礼を言うも適当に流されて買い物の詳細を聞かれる。



「さあな、キロ単価3000で買える分全部っつったから…数トンから十数トンぐらいじゃね?」


「…子供のお使いじゃないんだからそんな適当な……まあいいわ、研究所の庭に大きめのテントを張ったからソコにお願いね」



まだ詳しい数字を見てるワケじゃないから曖昧な予想で答えると、リザリーは呆れた様子でため息を吐いて指示をした。



「オッケー、多分運ぶのは夜中になると思うけど構わないだろ?」


「ええ、どうせ動くのは明日になるから朝までに運んでくれればそれで」


「んじゃ、そろそろ契約書が出来てると思うから行って来るわ」


「頑張ってね」



色々と確認を取って時間を見ると…さっきから二時間ほど経ってるので、そう言うと珍しく労いの言葉をかけてから電話を切る。



…契約書、出来てるといいなぁ…



ケーブルカーに乗り、スムーズに事が進むよう願いながら景色を見るも移動速度が速めに設定されてるらしく…



10分もしない内に工場のある駅的な建物に到着した。



「…契約書、出来てる?」


「…え?あ、担当者が先ほど移動してるのを見ましたが…」


「そう?ありがと」



一応受付の人に聞いて見るもやっぱり分からなかったらしく、曖昧な感じの答えが返ってくるのでとりあえずさっきの部屋へと向かう。



「あ!ちょうど良いところに…契約書が出来ました!」



部屋に入るとギリギリ青年がテーブルの上に広げた紙を見ており、俺に気づいて立ち上がって報告する。



「本当ですか?では早速サインを…」


「サインが必要な書類はこちらで、契約の詳細などはこちらです」



ギリギリ青年は俺が対面のソファに座るのを確認するとテーブルの上の紙の束を左右に分けて置き、説明した。



…契約の詳細ねぇ…変な事が書いてあったらマズイからリザリー達にも見せた方が良いかも。



「…すみません、こちらにファックスは置いてありますか?」


「…え?ファックス…ですか?」



ちょっと考えて尋ねるとギリギリ青年は不思議そうな顔をする。



「あ、ファクシミリですね…一応上の人にも書類を見せた方が良いかと思いまして」


「あ、そうですか、それなら受付の方にあります」



機密情報保護とかでマズイかな?と思ったが、別に構わないらしいのでサインが必要な書類以外を手に取った。



「あちらに送った書類は直ぐに破棄しますので…なるべく早く戻って来ます」



ギリギリ青年を部屋に残して俺はケータイを取り、リザリーに電話をかけながら階段を降りる。



「…何よ?」


「契約の書類を研究所にファックスで送るから確認してくれ」


「…え?」


「あ、すみません…少しの間ファクシミリを貸して頂けませんか?」



リザリーの不機嫌そうな声を無視して用件だけ伝えて電話を切り、俺は受付の人に確認した。

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