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…俺も軍人の男の後をついて行き、テントの外で待つ事数分。



「…報告者はどこに?」


「この方です」



おそらく隊長であろう青年なのかおっさんなのか区別のつかない男が出て来て部下に問い、その部下が俺を指し示す。



「君、本当に魔物が出たのかね?動物を見間違えたのではないか?」


「…アレが動物だって?猛獣だとしても可愛いものだよ…信じないなら別に良い、ただし後悔しても知らないからな」



隊長っぽい男の疑うような確認に、俺は話に真実味がある…と思わせるように告げた。



「…どうします?」


「…この周辺での魔物の噂は聞かないが、どこからか現れた可能性も…念のため数人で確認に行ってくれ」



部下が指示を仰ぐので隊長っぽい男は考えるように呟いて俺の思惑通りの行動を取る。



「分かりました…」


「何かあったら直ぐに連絡を」


「はい」



部下は無線機で同僚達と取ると隊長っぽい男が念を押すように言う。



「…おい、魔物だって?」


「ホントかよ?」


「そんな噂は聞いた事ないが…」


「…よし、集まったな…では魔物を見た場所へと案内してくれ」



その場で留まる事5分もしない間に軍服姿の男達が数人、集まってくる。



「こっちです!」



なんか準備が出来たみたいなので俺は適当な嘘の場所へと案内する事に。



…町から10分ほど離れた場所あたりでいいかな?



一応目を覚ましたら直ぐに町に戻れるような距離じゃないと…



「…今のところは魔物が居そうな雰囲気は無いが…」


「もう少し…この先です!ここからはお願いします!」



軍人の一人が辺りを見渡しながら呟くので、俺は先に行かせるような事を言って立ち止まった。



「ホントかぁ…?まあ居てもどうせ弱そうなやつだろうけど」


「…気は抜くなよ、もし強いなら…」


「直ぐに連絡を取り合おう」



油断しまくりな男を別の奴が注意すると軍人達は二手に分かれる。



…ラッキー、後ろから襲い易くなったぜ。



やっぱり最初はあの油断しまくってた奴から寝てて貰おうかな?



右に向かった二人一組のペアを標的に定め、一旦は見えなくなるまでその場で待つ。



そして完全に二手に分かれたのを確認したところで…行動開始。



気配を消し、なるべく足音を立てないように走って油断しまくりな軍人を目視出来る距離まで詰めた。



「…ったく、やっぱり見たらないぞ」


「…まさかデマを…?一体何の為に?」


「さあな、とりあえず俺は右を見てくるからな」



俺が襲うタイミングを図ってるとまたしても分かれるみたいなので、標的を変更してあと一人の軍人の後ろに回る。



「がっ…!」



油断しまくりな奴に気づかれないように素早くこの軍人の首の一点を殴り、気絶させた。



…ツボ押し拳一式、昏倒急。



気絶した男を仰向けに倒し、ポーチの中から小さいスポイトと蓋が一体化した小さな小瓶を取り出す。



さて…この睡眠作用のある麻酔液的な液体を口の中に垂らして、っと…



…コレで半日は起きないだろ。



俺は小瓶の中の液体をスポイトで吸い取ると男の口の中に数滴垂らして蓋を閉める。



さて、邪魔な奴は先に片付けたし…楽な奴でもさっさと片付けるか。



油断しまくりな男が向かったであろう方向へと向かい、隙だらけな背中の一点めがけて殴った。



…ツボ押し拳裏六式、昏急。



「っ…!!?」



声を出す事も出来ずに倒れた男を仰向けににしてさっきと同じように小瓶の中の液体を口の中に数滴垂らす。



…コレで残るは左に行った二人だけ…さっさと片付けて残りの奴らを誘き出さないとな。



…いやー、念のために睡眠薬を持って来て良かったわー…



といっても効果が即効性で持続力もあるから、眠らせてるっつーよりも気絶させてるっつー表現の方が近いと思うが。

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