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…リザリー、マキナと貸し借り交渉を終わらせた後。



時間もあまりなさそうだったので、話が終わって直ぐにリザリー達から教えて貰った産地の近くの町へと影移動した。



…こんな山脈地帯にある町が戦闘区域になるなんて珍しい…



山側を抑えてから侵攻するつもりだったのか?



…ま、どうでもいいか…さっさと用事済ませて帰ろ。



あまり人通りの無い町中を歩きながら茶畑があるであろう目の前の山を見上げると、細い線のような物が見える。



ラッキー!ロープウェイ的なモンがあるじゃん!



ゴンドラなのかケーブルカーなのかモノレールなのか分からんが…歩いて登る手間が省けるってもんよ。



俺は町に移動して来て5分もしない内に移動手段を見つけ、ウキウキ気分で細い線の下へと向かった。



「…え…?」



ロープウェイ的な乗り物を管理するターミナルっぽい建物に着くも、入口の自動ドアに貼られている紙を見て思わず言葉を漏らしてしまう。



『諸事情により、休業。再開時期は未定です』



…嘘だろ…なんでこんな時に?



諸事情ってなんだよ、仕事してくれよ…ん?



落胆しながら心の中で悪態を吐くと近くにまた別の紙が貼られている。



『テスル・ラダッサ便、治安悪化に伴い運休。従業員は裏の階段を通って下さい』



「…テスル・ラダッサ…って紅茶の茶葉の名前じゃね?」



従業員は裏の階段を、って事は茶葉を作る作業自体はしてんの?



…うーむ、しょうがない…歩いていくか。



工場自体は稼働してるようなので…とりあえず徒歩で階段を登っていく事に。



…ああ、だるい…なぜ…コーヒー豆もそうだが、なぜこんな標高の高い所で育てる必要があるんだ?



普通に平地で育てても良さそうなもんなのになぁ…



土壌の問題?気候の問題?気温?気圧?…良く分かんねぇけど、訪ねる業者の身にもなろうぜ。



…俺は業者じゃねぇけども。



つーワケで、嫌々ながらも山登り開始。







「…お、このぐらいの高さともなれば景色が良いもんだ」



一段飛ばしでちょっと急ぎながら階段を登り、約半分?の多分500m地点で一旦止まって振り向くと…



いつの間にか町や山が一望出来る高さまで登っていたらしい。



…うーむ、晴れてて良かった…ってか、町中に軍のキャンプ?的なテントとか軍服を着てる軍人が見回りしてる様子が丸見えなんだが。



どこと戦ってるか分からんけども、敵がこの工場側から来たらヤバくね?



…まあ、こっちから見えるんならあっちからも当然見える…って事になるからこっち側から来てバレる可能性はあるんだけど。



…一応俺は変装してはいるが別に変な格好してるワケじゃないし、軍人が見ても気にも留めないだろうよ。



普通のパンピーファッションだからな。



従業員と間違えてくれたら幸いやわ。



…いつまでも同じ所に居て町を見てると怪しまれそうなので、登山再開。



「お」


「…あ、アルビオン工場に用ですか?」



階段ももうすぐ終わる…ってところで上からカゴを背負った青年が降りて来た。



そして俺を見て驚いたような表情をすると話しかけてくる。



「ええ、ちょっと茶葉を譲って頂けないかと交渉に」


「…業者の方ですか?…悪い事は言いません、大変でしょうけど引き返した方が良い」



営業スマイルで用件を話すと青年は珍しいのを見るような目になった後、小声で忠告をした。



「なぜです?」


「…この町は今、戦闘地域に指定されてるそうです…なので住民もあまり外出はできません、幸いこの工場や茶畑には手出し出来ないみたいですが…」



俺の問いになおも小声で今の状況を説明してくれた…が、リザリー達から聞いてる情報と変わらないのであまり有り難みはない。

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