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…とはいえ、ギルドにでも頼んで護衛だの武装集団の撃退だのをすれば良かったのに。



組織の変なプライドが邪魔して協力を要請出来なかった系?



たかだか武装集団ごときを返り討ちに出来ない情けない兵隊だ…って思われるのが嫌だったんかね。



…結局ユニオンに支援要請をしてる時点でそう思われても仕方なくなってると思うが。



「…町まで送ろうか?一人だと途中でさっきみたいに魔獣の群れに襲われないとも限らないし」


「…え?」


「え、良いんですか?私はありがたいですけど…」



俺の申し出にショコラが驚いたような反応を見せ、女の子は遠慮したように言い淀む。



…流石に俺みたいな紳士としては女の子をこんな危険な場所に放置して戻る、ってのは出来ないワケで。



見た目的にもそこらへんに居そうな普通の可愛さだから死ぬには惜しい感じだし。



「別に良いだろ?」


「え、うん…私は全然構わないよ?」


「あ、じゃあよろしくお願いします」



ショコラに確認を取ると、私に聞くんだ…みたいな意外そうな感じで了承して女の子が軽く頭を下げる。



…つーワケで、町までこの女の子を護衛することになった。



「…ねえ、どういうつもり?」


「…何が?」


「あ、すみません…やっぱり迷惑でしたか?」



少し歩くとショコラが普通の音量で思惑を尋ねるので聞き返すと女の子は困惑したように聞く。



「迷惑じゃないよ、迷惑だと思ってたら普通に助けないで見捨てたからね」


「あ…そうなんですか…」



ショコラの否定してからの酷い切り返しに女の子がなんとも言えずに呟いた。



「だっていつもは面倒事は嫌だー、ってスルーするでしょ?この子が女の子だから?」


「分かってるんなら聞く必要あんの?」



答えを知ってるくせに何故か面倒な質問をするので逆に問う。



「…ただ確認しただけ」


「そうか」



ショコラが素っ気なく言うので、なに拗ねてんだよ…とか、なんで怒ってんの?とか言いたくなったけども…



十中八九『拗ねてないし』『怒ってないけど?』的な返事をされてしまうだろうと予想し相槌を打つように短く返す。



そんなやり取りをするのも楽しそうだが、女の子が気まずくなったりあわあわしたりしたらソレはソレで困るのでここは我慢。



「にしても町にも武装集団が襲って来てたけど、なんなんだろうね?」


「内か外か区別つかねぇからな」



ショコラは多分所属してる組織の事を尋ねたであろう事を察して女の子にバレないようにちょっと濁す事に。



…内戦の線だと過激派かテロリスト、あとは権力争い…



外国との戦争なら近くの国の工作員か特殊部隊って線が濃厚かな。



それ以外のその他なら分からねぇや。



「え!町の方にも襲撃があったんですか!?」


「うん、撃退してる途中で逃げられたけど」


「逃げられた…じゃなくて逃してあげた、だろ?」



女の子の驚きながらの問いにショコラは頷いてその時の状況をちょっとだけ説明し、ソレを俺が訂正する。



「逃してあげた…」


「別に追う用事も無かったからね」


「そ、そうですか」



女の子は相手が弱かったのか、ショコラが強いのかを図りかねた感じで呟く。



そんなこんなで特に魔獣にも魔物にも人にも襲われる事も無く町へと到着。



「お、なんか終わってんぞ」


「本隊っぽいのが逃げたから囮も逃げたんじゃない?」


「…それもそうか」


「ありがとうございました!」



町の様子的に武装集団とやらの戦闘が終わってるっぽいのでショコラに振ると至極当然な状況説明をされ、納得すると女の子がお礼を言いながら頭を下げた。

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