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「…今回はえらく早いな…」


「データ取りは終わったからやる事ねぇからな」


「ならば指示があるまで座っておくか」



俺の手際の良さに若干驚いたように呟いた式部に遊ぶ必要が無い的な感じで返すと…



懐から式神を取り出して式使のお姉さんや式卜のお嬢さんみたいに椅子とテーブルを召喚する。



…え、ソレって式神使いなら出来て当然的な系?



みんなそのテーブルと椅子のセットを紙状態の式神として持ってるモンなの?



「…まあワザと早く倒したのには理由があってな…金属防具一式」


「?理由…?」



心の中で疑問に思いつつも椅子に座った式部にそう告げ、小箱から金属防具一式を取り出したら不思議そうに首を傾げた。



「…コレ、複製…オリジナルでは無いコピーだがてめぇにやるよ」


「…は?…ほ、本当なのか…?」



オリジナルの金属防具一式だけを小箱にしまい…テーブルの上に残ったコピー品を譲る発言をすると、式部は信じられないといった様子で聞き返す。



「データ収集を手伝った報酬だ、泣いて喜べ」


「…な、泣きはしないが…この嬉しさは、黒に告白をオーケーされた時に比べたら、流石に劣るが…ソレに近いぞ…!」



押し付けがましく言ったら良く分からない言葉が返ってくる。



「意味分かんねぇよ」


「…ほ、本当に良いのか…?コピーと言うからオリジナルには劣るだろうが…」


「コピーとはいえ性能はオリジナルと変わらんぞ、わざわざ一から作ったんだからな」



俺のツッコミにも特に反応せずに確認してきたけども…



その内容が聞き捨てならなかったのでまだ喋ってる途中だったが即座に反論した。



「…そんなモノを俺に…?…本当に、本当にいいのか?そんな貴重なモノを…」


「要らねぇなら返せ」


「いや!本当にくれるのならばありがたい!ありがとう!」



再三の確認にイラっと来たので回収しようとしたら…



素早い動きでテーブルの上に置いてある金属防具一式を取ってお礼を言いながら頭を下げる。



「…一応ソレ、お前用にちょっと改良しといたから…性能的には金属防具一式改、だな」


「…改良?」


「お前の事だから空飛べると分かったら、式使のお姉さんをお姫様抱っこして夜に飛行デートすんだろ」



ちょっと説明したら首を傾げられたので、俺の予想を話す。



「当たっている…俺の考えはお見通し、というワケか…」


「だから、お前を中心に直径3mほどの円形の空気の層…膜?的なモノを作れるようにした」



どうやら俺の予想はどんぴしゃだったらしく…なんともいえないような顔で呟いた式部に新機能を伝えた。



「…空気の膜、か…」


「理論上はソレを発動させてれば、豪雨や強風…たとえ台風でも全て遮断してくれる」



いわば中は悪天候の影響を受けないって事だな…と、一応分かりやすく説明する。



「…なるほど、つまりは黒を配慮した機能か…ありがたい」


「空飛んでる最中に台風が来ても大丈夫なようにしてやった」



式部が意味を理解出来たようなのでそうした理由を告げる。



…だって空飛んでる最中に悪天候になったら直ぐに屋内なんかに避難はできねぇし…



俺の過失も含まれた事で、式使のお姉さんがその被害を被るのはマズイからな。



式部がその恩恵を受けるのは本意では無いが式使のお姉さんの事を考えるとしゃーなしだ。



「その理論であれば雪やひょう、あられにみぞれも大丈夫という事になる…」


「お前悪天候って言葉知ってっか?当然中は穏やかなモンよ、そして気温も22℃前後に保たれ…しかも!どんなに高い所に上がっても空気が薄くならないのです!」


「なんと!まあお得!」



式部をバカにしつつボケると、まさかの乗ってくるっていう。



…お得って…確かに通販風に言ったから返しとしては間違えてないけど…



お前、そんな事も出来たんかい。



「…ド変態のお前の事だからな…絶対飛行プレイするだろうと思って空気や温度の調整もしといた」



式使のお姉さんが風邪引いたり酸欠になったら困るし…と、あくまで女性の事を配慮しての新機能である事を強調した。



「…オリジナルで後先考えずに黒とセックスしてたら大変な目にあっていたかもしれん…程君の配慮に感謝で頭が上がらない…」


「一応言うまでも無いが…飛んでるのはお前だけなんだから体位は考えろよ?」



己の愚行を想像したのが生唾をゴクリと飲み込みながら呟くので手遅れにならないように先に釘を刺して置く事に。



「ああ、ソレは大丈夫だ」


「…本当か?うっかりバックや正常位なんてヤった日には式使のお姉さんがそのまま真っ逆さまだぞ?」



式部の返事が心配なので優しい俺はどれだけ危険なのかを話す。



「そ、そうか!そういう事か!」


「飛行プレイで出来るのはせいぜい対面座位か背面座位…騎乗位ぐらいだろ」


「…確かに、俺は俺が下にならないといけない危険性をこれっぽっちも分かっていなかった…」



…いったい何が大丈夫だというのか…



俺の忠告で焦ったような様子を見せた式部に飛行プレイで可能な体位を教えると反省したように呟く。

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