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「いやいやいや!おかしいだろう!こんなのマジシャンの域を超えているぞ!」
「そうか?外国じゃこの程度の手品は普通だぞ?」
流石にコレは容認出来なかったのか声を荒げてツッコむ式部に俺は無理やり納得させるような嘘を吐いた。
「…ならばそのタネと仕掛けとやらを教えて貰いたいものだ」
「バカか、タネも仕掛けもバレたら面白くねぇだろ…手品っつーのは不思議だからこそ、なんだよ」
「…確かにそうだが…」
何故か疑うような、何かを探るように言ってくるので…
お決まりの言葉で一蹴するも微妙に納得のいかない歯切れの悪い呟き方をする。
「んな事より、コレで戦力は揃ったワケだが…一旦準備してから合流しねえ?」
「…そうだな、防衛省に乗り込むのなら手持ちの式神では心許ない…俺も色々と準備をせねば」
俺が強引に話を変えてそう提案すると…大して掘り下げる事もなかったからか急な話題の転換に何も言わず、普通に提案に賛成した。
…式部と一旦別れてある場所にゾンビと共に影移動したのち、変装しながら血を操る能力を使って仮死状態を解く。
…コイツはどういうヤツだったかな?適当に影移動させたからなぁ…
俺はゾンビに貼られてた紙に書かれてるメモを見て生前にどんなヤツだったかを確認する。
…お、7歳でドラゴンを倒したとかいう経歴を持つドラゴンハンターか…
なら雑魚妖怪ぐらいは楽勝だろうよ。
「…ココは…?…!お前は!!」
ゾンビになった男は意識が覚醒したのか辺りを見た渡して俺を見て驚いた。
「よう、お目覚めかい?」
「…くそっ!身体が動かない…!俺に何をした!?」
驚く男に適当な感じで声をかけると警戒しようにも身体が動かないからか、威圧するように睨みながら問う。
「何って言われてもね」
「答えろ!俺に何をした!」
答える気が無いのでとぼけて返すとバカみたいに命令してくる。
「…なるほど、生前はこの大剣を使ってたワケね…ドラゴンを狩るなんて勿体無い事をしてるから死ぬんだよ」
「何を…!くそっ!身体が…!」
俺がガン無視して男の背中に背負われている身の丈ほどの大剣を見ながらバカにしたように呟くと…
男は理解出来てないような様子で返し無理やり身体を動かそうと無駄な努力をしていた。
「よし、準備は終わり…あとは自我を封印して、と…」
「なんだ!?止めろ!何を…!?」
変装が終わり男の頭を掴むと反抗するような態度を見せるが、身体の方は全く動かないので口で文句を言うだけになる。
…よし、コレで終わり。
身体のプロテクトを外し、身体能力は常にMAXの状態…
しかもどんな傷を負っても瞬時に回復し、命令に忠実…っと。
…この状態のこいつを殺すには溶鉱炉や溶岩の中に落とすとか…
回復能力が間に合わないぐらいの速度でダメージを与え続けて、原型が留めなくなるまで攻撃をする…ぐらいしか方法は無いだろうな。
…とは言えソレが戦いを知らないただの一般人ならまだしも、生前は凄腕のドラゴンハンターだ。
ソイツを殺せるぐらいの化物はこの世界にはそう居ないだろう。
リザリー達でさえ…どうだろうか。
同じ化物の括りでもトップクラスの日比谷レベルじゃないと難しいかも。
…つくづくこんな世界でこんな裏技を使わざるを得なくなる、っつー俺の修行不足というか…
まあとりあえずそんな弱い自分が嫌になるぜ。
「…はぁ…」
「?どうかしたのか?」
俺が自己嫌悪しながら式部と合流し、ため息を吐くと不思議そうに聞いてきた。
「いや…わんぱく相撲で横綱が技術を使うって辛いな、って…」
「…確かに、プロのトップクラスは子供が相手ならばただ前に歩くだけで勝ちそうなものだが…なぜ相撲?」
今の俺の心境を国技に例えて言うと式部はノリツッコミのように疑問を口にする。
「なんとなくだよ、ソレに近い気分だったんでな」
「…雑魚妖怪ごときにあの武器を使う事が、か?」
「ん、そんな感じ」
適当にごまかすと的外れな疑問を聞いてくるので、俺は投げやりな感じで頷いた。
「雑魚とは言え大人と子供ほどは離れてないと思うが…流石に同種だと技術の差か…」
式部は変な納得の仕方をして袖から式神を取り出して大鷲を召喚する。
「今から行って大丈夫なのか?」
「ああ、妖怪が出てる時間は現場に出向いてるからな…むしろチャンスだ」
大鷲に乗って単純な質問をすると、タイミング的には丁度良い…的な答えが返ってきた。
「現場に、ねぇ…見張りとかは居ねぇのか?」
「あんな所にどこの誰が浸入すると言うのだ?」
「そりゃそうだ…俺だってあんなん聞いてないと絶対行かないしな」
もしもの場合を想定して作戦を練ろうとしたが、式部の話し振りからすると要らなそうだ。
…とは言え流石に無策で突入するほどバカじゃないから最悪の場合の策はいくつか用意しとかないと…
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