34
「…まあ俺の部下共が弱かった事は認めるよ、俺だってまさかそこらの奴にやられるなんて夢にも思わなかったからな」
「…そこらって言っても一応養成学校中退だけどね」
「六学年までは居たんでしょ?じゃあそこらの人達よりは強いんじゃない?」
俺の発言にショコラがツッコみ、マキナがエルーに向かって問う。
「俺は実際にソイツを見たわけじゃないし、戦ってる姿も見てないが…英雄と呼ばれてるぐらいだから強いんだろうな」
「いやいや、俺の部下共って多対一で連携して戦うよう鍛えたから普通に戦ってたら勝てないって」
逆にタイマンで戦うとなるとこいつらの状況じゃ厳しいかもしれんが…と、一応雑魚と思われないように再度言い訳した。
「じゃあバックアタックで攻撃して一体一体潰して行ったって事?」
「…かもしれんな、俺は見てないからどういう風に戦ったか知らんけど」
「…あんた部下がやられてるのに知らないって…一体何してたのよ?」
ショコラの疑問に適当に答えるとリザリーが呆れたように聞いてくる。
「何してたかなー?……確か、ガキ共と遊んでたような…」
「ええー…部下がやられてる最中に子供と遊んでたの?」
「…その子供って4属性の魔術が使えるとかいうアレか?」
思い出すようにこめかみに指を当てて呟くとショコラがヒいた様子で尋ね、エルーも思い出したかのように聞く。
「4属性!?…あ、そう言えばユニオンの養成学校にそんな逸材が編入したって聞いたような…」
「そうね、だいぶ前に聞いた覚えがあるわ…確かマーラスの英雄が二学年から編入させたって」
マキナは驚愕するとふと思い出したように呟き、リザリーも思い出したかのように補足のような言葉を告げた。
…そういやかなり前に養成学校の奴らとなんかやった時には見なかったような…
…まあ集まったのは多分上位の奴らだったから、まだ入ったばかりのガキじゃ召集されないか。
入ってどれくらい経つのか知らんが、ランキング上位に入るには超最速でも三学年からだし。
「因みにその子供達を養成学校へ通わせたのは俺達のアイディアだぞ、なあ?」
「…え?そうだっけ?」
エルーが何故か自慢するかのような少し誇らしげに言い、俺に振るが覚えてないので聞き返す。
「…覚えてないのか?その子供達をかなり痛めつけていた、とディルムードから聞いたぞ?」
「…覚えてねぇな…多分アレだよ、俺の事だから剣は叩けば叩くほど強くなる…的な感じだろ」
「…自分の事なのに随分人事のように言うのね」
全く記憶にないので自分のやりそうな事を予想して言うとリザリーが呆れたようにそう告げる。
「いやいや、自分の記憶に無い事なんてもはや人事じゃね?」
「えー、でも自分のやった事でしょ?」
「思い出せない上に、記憶に残ってねぇんだからソレすら判断出来ねぇだろ」
もし記録に残ってたとしても記憶に無いんなら全部人事やわ。
記録にしろ記憶にしろ改ざん可能なんだから自分が信じられると思う記憶こそが私事だろ。
「その考え方で言うと記憶に無い事に責任は取れない…って事にならない?」
「そりゃそうだ、もし養成学校時代にお前らと結婚の約束をしてても覚えてねぇからその責任なんて取れねぇよ」
「それ、ただの無責任なクズじゃん」
「仕方なくね?お前らだって見ず知らずの人から『昔結婚の約束をしたから俺は今まで独身なんだ、責任取って結婚しろ』って言われたらどうする?」
何故か俺が責められ始めてるので例をあげて逆に問う。
「証拠を見せなさいって言うわ、記憶に無い事は物証で判断する」
「偽物の証拠を持ってこられたら?」
「…それは…」
「おそらく行動に移すぐらいだから、その時点で色々調べ上げて偽の証拠を揃えてるだろうな…」
リザリーの高圧的な言い方に低確率でありそうな事を聞くとマキナが言い淀み、エルーが呟いた。
世の中俺みたいな嘘吐きや、あの手この手で騙そうとする詐欺師の類いが多いんだから信じられるのは自分の記憶以外なくね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます