16
「…よし!行くぞ…スラスター、オン!」
金属の小手と金属の脛当てを着けるとエルーは早速詠唱破棄で魔術を発動させた。
「先ずは慣らすためにそこらへん回ってからだぞ」
「そうだな…では!…おおっ!」
俺の指示に頷くと緩やかに前へと進んで驚く。
「確かに安定性が上がっているな…!これなら急発進しても転ばなそうだ」
一度止まったかと思えばかなりのスピードで前に進み…
あっと言う間に20m以上も離れた場所へと行っている。
…走り始めの速度って上げれば上げるほど胴の方の身体に負担が増すんだが…
…アイツなら100kmを超えなければ問題無いだろう。
そもそも両手両脚を一気に引っ張られてるのと同じワケだから…
立ち上がりにスピード上げると胴に負担だけとかじゃなく、肩とか股関節とか脱臼する危険性も増えんだよね。
加速性能なんてバイクの単車とかスポーツカーのターボとかと同じぐらいだし。
最高時速何kmまで出るのかは魔力の量次第だから不明だとして…
最低限身体が丈夫じゃないと、動き始めで脱臼したり折れたり最悪もげるかもしれんな。
…転ぶ危険性は減ったのにその分別の危険性が出てくるとは…
「エルー!そろそろ良いんじゃね!?」
っと、それよりそろそろ慣れてきただろ。
長時間使用して不具合等の何が起こるか分からないので、 とりあえず平原を滑走しまくってるエルーを呼び戻す。
「…スラスター、オフ…よし…!…行くぞ?良いよな…?」
キッ!と俺の前でちょうど止まったエルーが拳を握って俺に確認を取った。
「…ああ、無茶すんなよ」
「スラスター、オン!いざ!彼方へ!」
エルーはさっきの俺と同じセリフを叫んで詠唱破棄で魔術を発動させる。
そして徐々に金属の脛当てとエルーの身体が浮いて行く。
「…お、どうだ?バランス的には大丈夫か?」
「…ああ、多少不安定だが…手でバランスを調整出来るから大丈夫だ…」
それより…見ろ!俺、浮いてる!と俺の問いに答えた後にはしゃぎ出す。
「間違ってもエクソシストーとかやるなよ?下手したらヤバイからな」
「うっ…!」
先に釘を刺すと図星を突かれたような顔になった。
…アレはアレで落ちはしないけども、両手両脚のバランスが微妙に崩れただけで腰の骨とか折れる危険性があるからねぇ…
折れても直ぐに治る俺だからやったんであって、普通の人間がやったら大惨事やわ。
ピキッ…って痛めてその拍子にバランスを崩してボキッ!ってなる可能性だって否定出来ないわけだし。
…先に釘刺しといて正解だったな。
「とりあえず進んでみようぜ!」
「…そうだな…!…おっと…これは…!中々…!」
動くように促すとエルーはフラフラしながらもゆっくりと前に進む。
「上に上がったり、下に下がったり、旋回してみたりとか!」
「…お!…おお!おおお!!バランス取るのが難しいが、まるで鳥にでもなった気分だな!」
「落ちたら大怪我か即死っていう危険性も高いけどな」
自然界は常に死と隣り合わせだけど…鳥とか空飛ぶ魔物とかはより大変そう。
「だがコレは大幅にバランスを崩さない限りは落ちそうに無い」
エルーは俺の言葉に反論するように安全性を告げる。
「…俺が作ったヤツだからな、もう満足しただろ?下りてこいよ」
「ああ!こんな充足感や満足感を味わったのは久しぶりだ!」
満足した様子でエルーはヒーローのように、俺の前に直立姿勢で下りて来た。
そして金属の小手と金属の脛当てを外す。
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