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「着替え、二人分置いとくぞー?」
「あ、ありがとうございます!」
俺がドアを開けて洗面所兼脱衣所的な場所にショコラから受け取った着替えを置き声をかけると…
曇りガラスの引き戸の向こうから女子研究員の戸惑ったようなお礼の声が。
「ちょうどいいわ、ちょっと来て」
「え?いや、ちょっ…!」
着替えを置いて直ぐ様出ようとしたらドアが開き、タオル姿のリザリーが出て来たと思えば俺の手首を掴んで無理矢理風呂場へと引っ張った。
「えっ!?あの…クレイン所長?何を…?」
女子研究員はザブッ…と急いで顎が浸かるぐらいまで身体を湯船に沈め困惑したように問う。
いやいやいや…そりゃそうだろ、俺だって困惑してるわ。
一応靴は脱いだけどさ…女の子二人居る風呂場に男の俺を入れた意味。
…まあ二人とも身体にタオルを巻いてるけども。
「今回はちょっと激しくしちゃったから、明日筋肉痛にならないようにマッサージしてあげて」
「あ、おい…!」
リザリーはそう言うと何故か身体に巻いてるタオルを取る。
…タオルの下は全裸かと思いきや、あり得ない事に下着を着けていた。
風呂場なのに、身体も髪も濡れてるのに、下着姿…
「…残念でした」
「いや、まあ…確かにそうだが、助かったよ」
イタズラが成功したようなリザリーの笑みに、俺はホッとしたのが残念だったのか良く分からない感情になってそう返す。
「ほら、こっちに来て…」
「え?あの…」
リザリーが困惑状態の女子研究員の手を取って湯船から出すとタオルも取り、下着姿にする。
…ええ…お前も風呂場で下着の上にタオルかよ…
「大丈夫よ、私が見張ってるわ …変な事をしたら蹴り飛ばすから」
ちょっぴり残念な気持ちになってる俺を他所にリザリーはタイルの上に二枚のバスタオルを敷き、女子研究員にその上にうつ伏せで寝るように促しながら安心させるようにそう告げる。
「あ、あの…えと…よろしくお願いします…」
「あ、ああ、うん」
戸惑いながらうつ伏せになってお願いしてきた女子研究員に俺は完全に雰囲気に流されるままマッサージを始めた。
…え?なんか流れで良く分からん女の子をマッサージしちゃってるけど…
なに?これってどういう状況なの?俺ってこんなに流され易かったっけ?
「んっ…ふ、ぅ…」
困惑したまま背中やらお尻やら太ももやらふくらはぎやらを揉んで行く。
そしてソレをリザリーは湯船に浸かりながら見ている。
「…そこに潤滑剤の代わりにボディソープがあるわよ?」
「…いや、分かるけど」
リザリーの疑問形の言葉に頭が纏まらず意図を読み取れないまま思った事を返す。
「ローションの代わりに使わないの?」
「…使って欲しいのか?」
「ええ、どんな風にやるのか見てみたい」
良く分からない提案に問い返すと興味を持ったように頷かれた。
「わー、リザリーもやらしー事に興味あるんだー、年頃だもんなー…やらしー」
「えっ!?ひゃっ…!」
「…やらしい事をする気なの?」
俺がからかうように明らかな棒読みで思ってもない事を言うと、女子研究員が焦ったように振り向きリザリーが冷たく怖い声で尋ねる。
「おっと、冷たかった?」
「あ、いえ…ちょっとだけ…」
リザリーをスルーするようにシカトして女子研究員を気遣うように聞くと、振り向いた顔を戻しながら呟いた。
「…人にやらしいとか言っておきながらあんたの手の動きの方がやらしくない?」
「…んんっ…ふっ…」
「マッサージも愛撫も手の動きは一緒じゃね?」
ただ目的や与える刺激の種類が違うだけで、基本は一緒だと思うんだが。
「だとしたらマッサージが上手な人は夜の方も上手って事?」
「…ふぅ…ん…」
「…だろうな、逆もまた然り…と言えるかどうかは疑問ではあるけど」
マッサージは触る箇所や揉む、押す力の強弱が夜のソレとは技術が違うからなぁ…
ゴールデンフィンガーも指の動きや手の動き、腕の動きが主だし…
揉んだり押したり摩ったり、とかの技術はどうなんだろ…?
ゴムを付けない奴は挨拶うんぬんのゴッドフィンガー鷹さんはマッサージも上手なのか否か…
…ってか良く良く考えたら子供作る時はしないんだから挨拶がどうとか関係無くね?
親しい間柄なら挨拶なんて必要ない!って言うんなら、親しき仲にも礼儀あり。とかいう言葉の意味が怪しくなって来るし…
その言葉が無い異国以外でさえ親しくなればなるほどハグという挨拶が常態化するワケじゃん?
…つまりは、だ。
ゴッドフィンガーの言う事は矛盾しているのでは?
…っと、いつものごとくズレにズレたか。
外面では普通にボディソープで代用したオイルマッサージ的な事をしつつ内心の考えを軌道修正する。
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