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「…だって考えてもみろよ?魔力も才能も素質も持ってない俺が、魔力も才能も素質も持ってるお前に何を教えろってんだ?」
餅は餅屋とも言うし…
魔力も才能も素質も資質も実力も持ち合わせてるリザリーかエルーに教授して貰った方が効率良くね?
…まあ流石に大人げないからそこまでは言わないけどさ。
「…強くなる方法を、教えて下さい」
「強くなる方法?そんなん努力以外にあるワケねーじゃん」
チートだの能力の継承だのをした所でその力を扱えなければ意味が無い。
力をつけるにしろ、扱うにしろ、上手くコントロールするにしろ…努力は必須だ。
俺が力を与えても使う本人が努力しなけりゃ強くはなれん。
…ただ裏道というかワープというか…確実に近道なのには変わりはないと思うが。
…つーかリザリー達には俺がそんな事を出来る、してるなんて一言も言ってないハズだけどな…?
どこからか情報が漏れたのか…それともただ単に無茶振りの押し付けをしているのか…
「…努力…どういう風に努力すれば強くなれるんですか?」
「だから、お前にソレを教えられるのはリザリー達だって」
少しの間何かを考えて振り出しに戻ったようなクレインの質問に俺は同じ答えを返す。
「でも…程人さんって強いじゃないですか!お姉ちゃん達みたいに才能も魔力も無い、って自分で言ってましたけど…裏を返せば才能や魔力が無くてもお姉ちゃんと同格って事ですよね?」
どうやったらそんなに強くなれるんですか!?とクレインは全く俺の意図を理解してないようにぐるぐると話を繰り返した。
「…よし、分かった…オーケー俺の負けだ、強くなる方法を教えてやろう」
「やった!」
もう面倒になってきたので舌先三寸で言いくるめる事に。
…おっと、一応舌先三寸とは言えコレは正しい事だと思うよ?
「それで、どうすれば程人さんみたいに強くなれるんですか?」
「…そうだな…まず一番重要なのは相手を倒すのに手段を選ばない事だ」
急かすように聞いてきたクレインに俺の心構えで、最強になるための方法を教える。
「手段を選ばない…?」
「そうだ、戦いにルールなど無い…常識もマナーも守る必要は皆無だ」
「…えと、言ってる意味が…その…」
オウム返しで聞いてきたクレインにそう話すと若干困惑した様子で言い淀む。
「相手を殺すためなら恋人や家族、友人を人質にとる、家ごと燃やす、町ごと破壊する…などの行為を躊躇わない事だ」
「えっ!?いえ、でもそれって…!」
「寝てる間に殺す、騙して殺す、後ろから殺す、動揺させて殺す、罠を仕掛けて殺す…ソレが努力する事以外で手に出来る強さだ」
流石にここまで言うとクレインは人としての良識で戸惑うが、俺は構わず言い切り最後にそう纏めた。
…まあ実際は手段を選ばず相手を倒す…ってのも敵の強さによっては結構な技術が必要になってくるから、結局努力は必須なんだけどね。
結果を求めるなら過程を重視しないといけない。
過程を重視するなら技術が必要になる。
最終的に『結果を出すには努力が大事』の一言で片付くっつー単純さ。
核兵器だって科学者の努力の賜物だろう?
『人道的』なんて戦いになっちまえば何の意味も持たない言葉だし。
ルールに常識、人道を守るのは『戦い』じゃなくて『闘い』。
闘いなんて甘っちょろい遊びをしてる人間が戦いで鍛えられた俺に勝てる道理なんてあるワケねーべ?
まあ人間は戦争にさえルールを付けるっつー意味分からない生き物だしな。
ルールがあるなら『戦争』では無く『闘争』の方の表現にして欲しいよね。
本当の『戦い』に身を投じてる俺の意見としては。
「…努力以外で手に入る強さ…」
「やろうとは思わないが、リザリーやエルーと戦うためにお前を人質にすれば勝てるだろうなー」
クレインがうつむきがちに俺の言葉を呟いたので、テキトーな軽い感じでそう返す。
「…そんな強さなら、私…要らないです」
クレインは顔を上げると決意を秘めたような目でそう告げた。
「ですから、そ「れ以外の強さは無い」…!」
続くクレインの言葉に俺は被せながら一蹴する。
…くっそ、堂々巡りじゃねぇか…
なんでこんな面倒な事を繰り返さなけりゃならないんだ?
ってかなんでこんな面倒な事になってんだっけ?
えーと…確かさっきまではみんなでトランプでワイワイ遊んでたよな?
ショコラの王様ゲーム!とやらで盛り上がってたような気もするし。
エリアが女装男子の役で、リザリーが男装女子の役の即興劇みたいのがあって…
俺が男装女子の役で、ショコラがお嬢様の役での即興劇もした記憶が…
…マジでなんでこんな事になった?
よし、ちょいと思い出そう…
アレは遡る事もない二時間前。
…二時間前?一時間前だったような気もするが…
れれれ?一時間半前だったような気もするぞ?
………ま、まあいいや!アレは二時間ほど前の事だったような気がする、おそらく多分。
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