10
「好きな人となら一緒に居るだけでデートじゃないの?それとも私とじゃ楽しくない?」
「…楽しくねーよ、何が悲しくてこの状況を楽しいって思えんだよ」
ショコラの問いに俺は突っぱねるように答えた。
「え…?」
俺の言葉が予想外の返答だったのかショコラはショックを受けたかのような…驚いたような顔になって立ち止まる。
「ただ楽しくはねーが、嬉しいではあるな……お前らと一緒に居る時はいつも超嬉しいよ」
「……っ…!///」
俺はショコラを取り残すように少し歩いて振り向きざまに笑顔でそう告げると…
ショコラは一瞬何言われたのか分からないような感じのポカーンとした後に、俺の言葉の意味を理解出来たのか顔が真っ赤になった。
…俺のキャラに合わないツンデレだかなんだかの返しは流石に恥ずかしいけども、偶には違った事をしないと飽きられてしまうからしゃーねぇ。
こういうのはキャラに合わない人がやるからこそ、相手の好感度が上がるような気がする。
「ま、仕事じゃなけりゃ楽しいって思えたんだろうけどな」
紅くなっている頬を両手で隠すように?包み込んでいるショコラに気づきながらも、大人な俺はあえて気づかない振りをしてそのまま歩きながら振り向かずに話を続けた。
漫画とかではこういう場面になったら女の子は恥ずかしがってるし…
紅くなってる顔を見られなくて良かった…とか思ってたりもするから、この対応で多分正解だろう。
流石に無自覚天然タラシみたいに不思議そうな感じで『顔が赤いぞ?熱でもあるのか?』とかは無理だ。
そんでデコとデコを当てて熱を計るのなんてもっと無理。
俺がソコまでやるとかえって逆効果になっちまいそうだしねぇ…
…いや、俺に限らずそういうのは無自覚天然キャラじゃないと無理だろうよ。
自覚して、狙って出来んのは羞恥心の無いダイヤのハートの持ち主ぐらいでしょ。
俺がやったらほぼ確実に不自然さで内心の醜い下心がバレるって。
…そうなりゃ、あざといとか思われて逆に好感度下がるな。
「あ、ちょ…ちょっと待って…!」
暫く立ち止まっていたショコラが結構な距離が空いた所で我に返った?のか小走りで追って来る。
「へーいよ」
俺が先に行っても仕方がないのでその場で立ち止まってショコラを待つ。
…にしてもこんな金属の箱を持ってるのに街の人達がチラ見するだけっつーのも、反応が薄いというかなんというか。
普通なら街中に金属の箱を持って歩いてる人がいたら二度見ぐらいしそうなもんだけど。
…うーん…この反応が普通なのか、それとも普通よりもドライなのか…
「?どうしたの?」
「いや…取るに足らないどうでも良いこと」
軽く周りを見渡してる俺に、追いついたショコラが不思議そうに聞いてきたので適当に返した。
「??」
「…とりあえず行くぞ」
俺は可愛らしく不思議そうに右に左に首を傾げてるショコラにそう言って歩き出す。
そのまま街中を歩いてるとなんか噴水のある広場に到着。
「ん~…どうやら私達の方が早かったみたいだね」
「んじゃ、ベンチにでも座っとこうぜ」
ショコラが辺りを見渡しながらそう呟いたので俺は近くのベンチに向かって歩く。
「そだね…あ」
「どうかしたのか?」
「なんでもない…先座っといて~」
「…おーう」
賛同した後に軽く声をあげたショコラに問うも特に問題は無さそうなので…
お言葉に甘えて先にベンチに座る事に。
…いやー、平和だねぇ…特にやる事も無さ気だし、誰か来るまで寝てようかな…
「はい」
「…アイス?」
俺がベンチに寝転ぶと小走りで戻って来たショコラが手に持ってるアイスを差し出す。
「ん、デートの定番でしょ?広場でアイスって」
「いや…まあ、そうだが…」
「食べ終わる頃には来るといいねぇ…」
デートじゃなくね?と思いながらも上半身を起こして差し出されたアイスを受け取ると、ショコラは隣に座ってアイスを食べ始める。
「ほっぺにアイス付いてるよ?ちょっと待って…」
「はあ?」
ショコラはいきなり意味不明な事を言うと俺の頬に軽くキスをした。
いやいやいや…そんな漫画みたいに頬にアイスを付けるやつが現実にいるかよ…
…つーかなんでキス?アイスが付いてないから舐めとれなかったのか?
「…お前も付いてるぞ?」
「ひゃっ…!」
内心呆れながら仕返しに、と俺も付いてもないアイスを舐めとるようにショコラの頬に軽くキスする。
…なんだこれ?ショコラの理想のデートシーンなのか?それとも性欲じゃない方の何かの欲求不満的なアレなのか?
…どっちでも、どうでもいいけど…俺を巻き込むなよ…
ハルトかエルー、エリアあたりとでもやりゃあ良いじゃん。
「えへへ…まるでデート、してるみたいだね…///」
…なるほどな、分かったぞ。
コイツ、また彼氏と別れたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます