22

「ともかく、あの男を追った方がええ」


「?あ、一人じゃ危ないから?」



なにやらおっさんが無駄にシリアスな雰囲気なのに少年はそれに気づかないでほんわかした事を言う。



「…あの男と、何を…?」


「…いや…特に何も…強いて言うなら、人を尋ねられたぐらいだ…」


「…そう…」



女の子は最初はただの疑問系だったのに対し俺の返事を聞いた後には隠すような警戒が混じっている。



…この警戒は俺に対してなのかあのバンダナに対してなのか…



それとも両方なのか微妙だが…どうやら地味に疑われてるっぽいな。



まああんなあからさまに怪しい状況になったんだから分からない事も無い。



なんせ俺とバンダナが作業用エレベーターから出て直ぐに待ち伏せしてた戦闘員達からの襲撃だし。



しかも俺が降りて来たタイミングが丁度良く敵を倒した後。



そりゃ疑われるのも無理はないっしょ。



この疑いを晴らそうにもそれだけの材料がない上に無理にやると余計に疑いが深まるだけ。



だからここは特に何も言わずにスルーすんのが一番だね。



…ソレはさておき…なんだろうこの空気。



シリアスなおっさん、隠してるけどちょい警戒気味の女の子、いつも通りの俺と少年。



という…なんとも気まずいような変な雰囲気が流れる中、バンダナの後を追うように進む。



「?あれ?ココって…行き止まりのハズじゃ…」



まだまだ先に進めるはずの通路で止まると少年は辺りを見渡して呟いた。



「…間違いない、昨日は突き当たりやった場所や」



おっさんは周りの土壁を見て触り首を縦に振る。



「…隠し、通路…?」


「…なるほど…隠し通路か…」



俺と女の子も土壁を探りながらどこまでが突き当たりだったのかを確かめた。



「掘り進めたわけや無さそうやな…無理やり壁を破ったって感じや」



通路の隅にある土壁の破片を手に取って推測する。



…壁をぶち破るってのは分かる、けどなぜ律儀に四隅まで全部破壊したんだ?



通れる分だけ破壊すればいいだろうに…



破片も通行の邪魔にならないようにご丁寧に通路の隅に寄せてるし。



「…こんな時間が…あったのか…?」



あのバンダナが降りて、少年達と戦闘員達をすり抜けた時間を考えても不可能じゃね?



「…もしかして…壁を壊したのは、戦闘員だった…とか…?」



俺の呟きを聞いた女の子が推測を立てた。



「…なるほど、なら…この先に居るのは…」


「黒騎士っちゅー事やな」



おっさんが急に俺らの会話に割り込んで美味しい所をさらっていく。



「…でも…」


「よし!行こう!」



女の子が何かを言おうとしたが少年の声にかき消される。



その後に女の子は特に言い直す事なく黙ったまま進む。



…ここで言っても雰囲気を壊す、と判断したんだろう。



おそらく疑問に思ったのは二つ…かな?



傷を負った黒騎士が昨日の今日でこんな所に隠れるのか?



本当に黒騎士が居たとして、なぜあのバンダナがこんな場所を知ってるのか?



って感じかね…あくまで俺の推測にすぎないけど。



「…ここは…?」



10分ほど進んだ所に石で出来た門のような物があり扉が少し空いていた。



中に入ると村でもすっぽり入りそうなほどのかなり広い空間が。



空間の奥には大きな神殿のような建物が見える。



…ここからでも見えるっつー事は20mぐらいか?



いや…15…17…18m?



近くで見ないとはっきりしないが多分ソレぐらいはあるかも。



「…なんやココ…地底人でも住んでるんかいな」



この光景を見ての第一声がそれかよ。



おっさんの呟きに内心ツッコミを入れつつ歩き出した。



…地底都市とか地下都市とかは見た事も行った事もあるが…



こんな微妙な広さの場所は初めてだな…



「…ん…?」



良く見たら…家らしき建物が…無い…?



「どうしたの?」



俺が家らしき建物を探して辺りを見渡してると少年が聞いてくる。



「いや…家らしき建物が見当たらない…」



こんな石像とかモニュメントらしい建物や枯れ木とかはあるのに…



人が住めそうな家っぽい建物が一つも無いってどういう事?



つーかこの国に地面の下にこんなん造れる技術があるとは考えられん。



だけど、別の国からの移民や亡命者達が造ったにしては居住区が見当たらない。

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