『人間、辞めましたシリーズ』

3

おっと、当然家族の中で生き残ったのがただ一人って意味だよ？

村全体では数人生き残ってるって話だったし。

「なぜ…それを…」

「言っただろ？メイド達から色々聞いたって」

「…と言う事は、私を鍛えてくれるんですか？」

女の子は期待を込めたような声で聞いてくる。

「一応は、それでも君次第だけど」

「なんでもします！お願いします！」

俺の言葉を聞くや否や頭を下げた。

「なんでも…ね、じゃあ俺が今から言う事を必ず守るって誓えるかい？」

「誓います！」

覚悟を試すつもりで条件を言おうとしたら内容を話す前に返される。

「…内容も聞かずに安易に誓って良いのか？」

「強くなれるなら…奴らに復讐できるならなんだって出来ます」

大丈夫かこいつ…？みたいに確認すると決意を固めたような目で睨まれた。

「そうか、じゃあ一応内容を言うぞ？」

第一に絶対に逃げ出さない事

第二に俺が指示した事を絶対にやりとげる事

第三に俺の言いつけを絶対に守る事

第四に俺に絶対逆らわない事

以上の4項目のルールを自分の全てをかけて守る事を誓うか？

「…貴方の言う通りにやれば強くなれるんですよね？」

内容を聞き終わると女の子は俺を見て質問する。

「ある程度までなら確実に強くなれる」

「ある程度…？」

「どこまで強くなれるかは俺が決める事じゃないからな…君の努力次第だ」

「そうですか…なら私の命にかけて誓います」

一体あの惨劇？でどれほどの体験をしたのか分からないが…

女の子は俺の答えを聞き躊躇う素振りを一切見せずに言い切った。

…少しはためらって欲しいと心の端で思ったが、まだ年端も行かぬ少女がここまでの決意を固めてる事に軽く圧倒されてるってのが心の大半を占めている。

…え、なにこれ？覚悟が足りなかったのはどうやらお前の方だったらしいな、ドヤ顔。とかされるパターンのやつ？

「…じゃあ早速明日から修行を始めよう、今日はゆっくり休んでおけよ？」

生半可な覚悟じゃなかった事に虚を付かれほんの少し動揺したが、外面には微塵も出さずに言った。

「明日から…分かりました」

「ああ、先に修行の内容から伝えて置くか」

さっきまでの普通の一般人とは明らかに違う決意を秘めた目で去ろうとした少女に後ろから声をかける。

「内容ですか？」

「おう、とりあえずひたすら死にかけてもらうから…もし死んでも悔いが残らないように過ごせよ」

俺の発言が自分の想像を軽く超えてたからか女の子はフリーズした。

ピシッ…と擬音が付きそうな感じで固まってる女の子を放置してメイド達に報告すべく別荘へ。

…さーて…色々と準備しねぇとなぁ…面倒ではあるがあの女の子があそこまでカッチカチの決意をしてるってのが救いかね。

アレなら最短のかなりヤバい修行でも耐えられるだろうし。