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「?どうしたの?」


「いや…苦労した時代を思い出してな…」



嫌な事を思い出して遠い目をしてるとキリが不思議そうな顔をして聞いてくる。



「下積みってやつ?」


「ま、そんな感じかね」


「「「「ご馳走様でした!」」」」



適当に流すと子供達が続々と箸を置いて手を合わせた。



「今日は私がお皿をあらう!」


「…私も」


「じゃあ私も!」


「ん~、じゃあ一緒に洗おうか」



下の子達の主張にメイド達の代わりに監督でもするのかキリも一緒に皿を運んで行く。



「俺もキリ達の手伝いして来るから父さん達はゆっくり食べてていいよ」


「そうか?じゃあまあお言葉に甘えるとしますか」



少ししか残ってない料理を人数分の小皿に分けて空になった大皿をライナ渡す。



「この鍋も持って良い?」


「ちょっと待ってね」



真ん中の子が寸胴鍋を持って行こうとしたのでメイドの一人が中身を人数分のコップのような容器に入れる。



「「「いただきます」」」



俺とメイド達が同時に合掌紛いの事をして夕飯を食べ始めた。



俺は普通に噛むのが面倒だったので炒飯の上に回鍋肉やらエビチリやら餃子を乗せて、更に卵スープをかけて掻き込み半分飲み込むように食べる。



「…ご馳走さん」



一人前でもそこそこな量だったが5分もかからず平らげた。



「…早いですね」


「噛むのが面倒で猫まんま的にして半分飲み込んだからなー」



お前らはゆっくり食っとけよー、と言葉を残してリビング的な大広間のような部屋に向かう。



…皿はメイド達のも纏めて洗った方が二度手間は少ないだろうから放置で。



ついでに片付けてくれるさ、うん。



ソレより…真ん中の子の友達とやらに会っておかないとな。



決して自分で後片付けしなかった事を正当化しようとしてるワケじゃないよ?



ほら、片付けてる間に帰られたらまた明日まで待たないといけなくなるじゃん?



言い訳じゃないよ?と説明すればするほど泥沼化していくのでこの話はココで打ち切り。



「おっ、君か?強くなりたいとか言って頭を下げた子は」



リビング的な部屋のドアを開けると見知らぬ女の子が真ん中の子と一緒にソファに座ってたので、後ろから声をかける。



「え?あ、はい」


「…お父さんどうかしたの?」



女の子はなんだコイツ…?みたいな反応をして真ん中の子は怪訝な目で俺を見た。



「ちょいとその子に話があってな…ココじゃなんだから付いてきてくれる?」


「…分かりました」


「…変な事しないでね?」



女の子がソファから立ち上がると真ん中の子が釘を刺すような事を言う。



…一瞬どう返すかどうか迷ったがスルーする事に。



アイツが言う変な事ってのがどういう括りなのか良く分からんから返事のしようもない。



「あの…どこまで…」



別荘から出て暫く歩くとついて来てる女の子が不安そうに聞いてくる。



「…ここらでいいかな…ごめんね?あいつらには聞かせたくなかったから」



俺は修練場の近くの林で足を止めて女の子に向き直った。



子供達が会話に乱入してくると前に進まないどころかしっちゃかめっちゃかに掻き回して終わりそう。



「あ、いえ…」



周りに人気が無く真っ暗な場所に見知らぬ人と二人っきりだからか警戒しながら不安そうに辺りをキョロキョロと見渡す。



…何かあったら直ぐに逃げ出せるように逃走経路を探してんのか?



「で、君の事はメイド達から色々聞いたよ…まあ運が悪かったね」


「…え?」


「村が焼き払われたのに君だけ生き残ったんだろ?だから運が悪かったね、と」



家族や知り合いを失い、トラウマを背負って、経済的にどん底まで落とされてまでもなお生きないといけないなんて…



俺の語彙力じゃ不運以外の言葉では言い表せない。

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