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「…やべ…」



ディアボロティスの行動に思わずキャラを忘れて呟いてしまった。



幸いな事にみんな…少年も女の子もただ者じゃないお兄さんもディアボロティスの行動に釘付けだったので聞こえてなかったと思うが。



「な、なんだ…あれ?」


「黒い…球体?」



前足に力を入れ、後ろに引くような感じで重心を低くしたディアボロティスの口の前に黒い球体が現れてどんどん大きさが増していく。



ただ者じゃないお兄さんもその行動が何か分からないだけに無闇に攻めず、臨戦体勢のまま剣を構えている。




「……くっそ、迷う時間ぐらい…!」



この中で唯一ディアボロティスのその行動の意味が分かっている俺は焦りながら超早口で大魔術の詠唱を始めた。



…間に合え…!!



祈りに近い事を思いながら詠唱をするも、徐々に大きさを増していた黒い球体が一気にスイカぐらいのデカさになる。



が、俺の詠唱はまだ9割ほど。



つまり…詠唱は間に合わなかった。



「くっそお!!!ガイアグラクローション!」



黒い球体が形を変えて発射される寸前に叫びながら半端な大魔術を発動させる。



かなりの大きさになる土の槍が黒い球体の真下の地面から勢い良く突き出て攻撃の軌道を変えた。



その刹那、数千mもの上空で大爆発が起きる。



「「「なっ……!!?」」」



まるで核爆発のようなソレは横に何十kmと広がり…俺らの所まで熱風が押し寄せた。



「はぁ…はぁ…ギリ…」



俺は演技では無く本当に地面に膝を着いて息を切らしながら呟く。



…だって今まで溜めに溜めていた賢者を少し上回るぐらいの魔力を一気に使い切ったんだから、仕方なくね?



にしても凄え威力だな…俺が軌道を変えなかったら連鎖爆発でこの国の1/3は壊滅してたぞ。



流石に子供といえど魔界の上級に位置するだけあって半端ねぇ。



でも、次に今ぐらいの攻撃をするとしたら最低でも一ヶ月はかかるだろうよ。



…種のトップでも今のレベルの攻撃をするまでには二日ぐらい溜めなきゃいけないハズだし。



「な、なんだ今のは…!」



空を見ながら今まで無表情で淡々と戦ってたお兄さんの表情が変わる。



「…化物め…!」



ディアボロティスを見る目も変わり雰囲気も変わった。



多分、最大限に警戒し本気で相手をするんだろう。



「ウオーゥ!」



またしてもディアボロティスは遠吠えのように吠えてからお兄さんに襲いかかる。



…ありがたい事にあの攻撃を防いだ俺はアウトオブ眼中らしい。



そして一人と一体は熾烈な戦いを繰り広げながら去って行った。



俺は内心ホッとしつつキャラに合わせるため膝を着いた状態から地面に倒れ込む。



「な、なんだったんだ…?あっ!ナナシさん大丈夫!?」



少年はお兄さん達が去って行った方向を見ながらも倒れた俺に気付いたらしく走って近づく。



「…すまん、少し無理をし過ぎたようだ…」



身体が動かないテイを装って少年に肩に担いでもらう。



「…さっきのは…?」



女の子も左肩を持って二人に両肩を貸してもらう形で引きずられる。



「…おそらく俺の予想が当たっていれば、昔聞いた事がある『悪魔喰らい』だ」



実はディアボロティスは冥界では悪魔喰らいとして恐れられてるってば。



あの種はなぜか悪魔が大好物で見るや否や速攻で噛み付いて齧りつく。



普通なら齧られた所で水蒸気だかなんだか…液体化や気体化して回復するんだが、不思議な事にディアボロティスに噛み付かれたり齧られるとそのまま食べられてしまうらしい。



なぜ悪魔や魔獣を食べられるのか?



その原理は今の所全く解明されていないだけに悪魔にとっては恐怖の対象だ。



もちろん魔獣や七大魔王の恐怖の対象でもあるが。



俺の予想は、牙や舌から出る分泌液や唾液が関係してるとニラんでるけど…



いかんせん証明のしようが無い。



まあそこらへんの云々は飛ばして、とりあえずディアボロティスは通称『悪魔喰らい』と呼ばれてるっつーワケ。



「悪魔…喰らい?」


「…俺も詳しい事を聞いたわけでは無い、ただ…」



説明の途中で、うっ…!と身体が痛む演技をした。



「だ、大丈夫?」


「…ああ、身体の方は少し休めば回復する、だが魔術の方は…」


「…あの攻撃を防いだのは、正に神業…魔術が使えなくなるのも、仕方ない」



女の子は俺の行動を評価するように言ってフォローしてくれる。



「空一面を覆い尽くす程の爆発だったもんなぁ…」



アレがもし普通に真正面に行ったとしたら…うう…恐ろしい…!と少年は体を少し震わせて呟く。

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