5

少年が昇級した祝いとして青年達に装備を買って貰い…



夜には村人全員が酒場に集まって少年の昇級祝いだかの宴会的な騒ぎに。



村人総出で喜ぶってのも小さい村ならではだな…と思いながらも俺は店の端っこで目立たないようにやり過ごした。



結局、深夜まで続いたその宴会では俺と青年だけが唯一シラフだったワケで…



家に帰った人々や酔い潰れて寝っ転がってる奴らの代わりに後始末と言う名の片付けに付き合わされるっていう。



そんでもって翌朝…ってか昼前?に少年と共に村を出発。



「…アレ?そう言えば当たり前過ぎて気づかなかったけど…ナナシさんはなんで俺に付き合ってくれてるの?」



丁度関所と村の中間地点に差し掛かった所で、今更少年が質問してくる。



「…どうせ、ヒマだからな…」


「なるほど」



俺が一拍置いてさも重要そうにギャップのある事を言うと、普通に流された。



あっと、この国では珍しい事に国内が地方毎に関所で区切られてるってば。



…まあバリバリの軍事国家や魔獣の多い中規模の国には良くある事だけど。



この国みたいに魔獣もソコソコで中規模寄りの微妙な小国に関所ってのは中々珍しい事だよ。



北海道の地方毎に関所が建ってる…みたいな?



…良く分からない例えだし、本当にそうなったら移動とかが不便だな…



とりあえず反省。



そんなこんなで襲って来る魔獣を軽くあしらいつつ歩く事二時間ちょい。



なんたら関所に到着。



「ん?おお、ミルディじゃないか…久しぶりだな」



関所の見回りをしてたであろう国軍っぽい兵士が歩いて来た俺らに気づく。



いや、俺らってか気付いたのは少年だけっぽいが。



「うん、久しぶり」


「ん?今日はカールと一緒じゃないのか?」



斜め後ろに居た俺を見て兵士が不思議そうな顔をする。



「えっと…実はしばらく村を離れる事になったんだ」


「なにっ…?何があった?喧嘩したのか?家出なのか!?」



少年が頬を掻きながら言うと兵士がガッと両肩を掴んで捲し立てるように聞く。



「ち、違うよ!修行の一環として他のギルドの手伝いに行くんだ」


「…なんだ、そうだったのか…」



兵士はホッとしたように少年から離れた。



…物凄い田舎の優しいコミュニケーションだな。



普通はこんな風に同じ所に住んでるから、といってそこまで親身に突っ込んでは来ないぞ。



…生活が豊かになれば人の心は貧しくなり、生活が貧しければ人の心は豊かになる…ってーの?



「ラーノさんは居る?」


「ああ、隊長なら部屋に居るはずだ」


「ありがとう、行ってきます」


「気をつけてな…ミルディをよろしく頼みます」



少年が手を振って先に関所内に走って行くと兵士が俺に頭を下げた。



「…できる限りは」



そう返して軽く頭を下げて関所内に入る。



今の関所はかなり昔と違って通行税を取ったり人民規制とかは全くしない。



主な役割は魔獣や魔物の群れや敵国の侵攻を防いで街や村を守るための盾的な感じ。



まあ犯罪者を逃がさないための検問的な役割も当然あるが。



だから過去に犯罪歴が無い善良な一般人なら普通に素通りできたハズ。



国の特別警戒でも無い限りは。



「ラーノさん、久しぶり!実は関所を通りたいんだけど…」



少年は必要もないのにいちいち関所の管理責任者?的な奴の部屋に入って行った。

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