08
周りからは兵器扱いされて、年頃なのに友達どころか普通に喋れる知り合いも居ない。
物心ついたぐらいの頃から今までずっとそんな状況だよ?
あ…俺が普通に喋れる唯一の知り合いか。
一応5年前からはボッチじゃなくなってた…でいいのかな?
俺が生きてる限り孤独にはならないと思うし。
とりあえずそんな状況下なのにまだソコから離れない、と。
流石は勇者、精神力が半端ねぇ。
「…ごめんなさい、あなたは何度も救いの手を差し伸べてくれてるのに…」
ちょっとした間が空いて何かしらの不安を感じたのか女の子が申し訳なさそうに謝ってくる。
いや、ただ考えに耽ってだけなんだけどな…
「別に気にしなくても…コレはどうせ俺のエゴに過ぎないんだし、君は自分の思った通りにすればいいんだよ」
自分の幸せは自分で掴む、俺はその手助けするってだけだ…
そう言い、直後に我ながら薄ら寒い事を…と自分の発言に後悔した。
「…ありがとう」
「なんのなんの、っと…もう目的は果たしたし俺は帰ろうかな」
もう夜も遅く辺りも真っ暗。
今何時だ?22時ぐらいか…?
ポーチから小型無線機を取り出し時間を確かめると現在時刻22:39。
女の子は早く寝ないと肌の調子に影響が出てくる時間帯だ。
「あ、待って…!もう少し…もう少し一緒に居てくれない…?」
俺の服の袖を掴み身長差的なアレで可愛い上目づかいになり可愛く首を傾げる。
「んな事言われても…肌のゴールデンタイムだぞ?君もそろそろ寝ないと」
普段の俺なら理性が揺さ振られそうな言動、光景だが今は心配してるのでやましい事は特に何も思わず頭を掻いた。
「肌の調子なら、食事やサプリメントでどうにでも整えられる…でも、あなたとは偶にしか会えないの…!」
「嬉しい事言ってくれるねぇ…んじゃもう少しだけ居るとしよう」
俺ってば結構チョロいからそんな事を言われたら好きになりそう。
…実際本当に好きになるかは分からんけど。
「…!じ、じゃあ!手合わせして!」
女の子は俺の言葉に嬉しそうな顔をして構える。
…え、えぇ~…?今まで通りの普通にお喋りじゃダメなんですか?
…まあ本人が戦りたいってんだからイイけどさ。
「別に良いけど…手加減出来ないよ?」
この女の子を相手にリザリー達やあの子供達のようにダメージを負わせずに済ませるなんて今の俺には無理。
力を解放すりゃソレも余裕だが。
「うん!」
女の子は元気良く頷き後ろにジャンプして下がったと思いきや、速攻で距離を詰めてからの左のハイキック。
普通の奴(一般人以外の兵士や傭兵)なら後ろに下がった途端に消えた!?と錯覚する前に沈んでるだろうよ。
いわばフェイントの一種。
残念ながら俺には効かねぇけどな。
「っと」
ちょっと膝を曲げて避け、脚が頭を上を通過する前に足首を掴む。
そして足首を掴んだまま左斜め下に下げて俺の右脚で女の子の太ももを挟んだ。
「うわっ!…この…!」
関節技の脅威を感じとったのか女の子は体を捻って体を浮かし左脚の踵で俺を蹴ろうとする。
「甘いよ」
「…~~っ!!?」
女の子が体を捻った瞬間に俺も同じ方向に回転するようにして…女の子の右膝をへし折った。
太ももを右膝で挟んで固定してるからねぇ…足首を上か前後に動かせば関節で動く方向とは違う方向だからベキッと折れるよ。
しかも自分の体全体を女の子が捻った方向と同じように回してるから左脚での攻撃は当たらないっていう。
「コレで右脚は使えなくなったな」
膝を折られても悲鳴を上げないし、今でも痛い素振りを見せないのは日頃の訓練の賜物か。
「脚の一本ぐらいどうとでも…!」
そう言うと左脚だけで跳躍しさらに地面を手で弾く事でスピードを上げ10mはあった俺との距離を一瞬で詰めた。
「…だから甘いって」
距離を詰めての片足ドロップキックを少し斜めに体をズラして避け、またしても足首を掴む。
「…あ!!」
女の子はしまった!って顔をしたがもう遅い。
今度は左脚で女の子の太ももをロックしてからベキッと膝をへし折る。
「…っ~~!!!」
これぞ地上最強の格闘術『カウンター関節技』。
敵の攻撃をいなして掴み、その動きを利用して関節技でへし折る。
柔術+関節技こそ世界最強の戦い方なり!!
因みに…相手が攻めてこないと出来ない、っていう欠点もあります。
…はぁ…魔術がこの世に存在しなければコレが使える俺こそが世界最強を名乗れたハズなのに…
いや、魔術が無い世の中だったらここまで辿り着けなかっただろうから結局今と変わらんか。
「両脚が使えないってのは流石に痛いだろ」
「…っ…!まだ…やれる…!」
「っ!?待て!」
女の子がポケットから小瓶のような物を取り出したため俺は焦って距離を詰め、手首を掴んだ。
「何もソコまでしなくても…もう終わるか?」
「…ごめんなさい、本気で戦ってるつもりだったからつい…」
俺の言葉に冷静になったのか手を離すと小瓶のような物をポケットにしまう。
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