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「…礼儀が良い、ソレで何の用かな?」
「なに、ちょっとした交渉さ」
「交渉?」
「私達は捕虜と引き換えにこの進軍を止め撤退して欲しいと思っています」
捕虜、と言うワードに反応したのか将軍の顔が変わった。
「まあ言葉だけでは信じてもらえないだろうし、実際に俺らの所に来てもらえない?」
「今の状況を見て、判断して頂きたく私達はココに来ました」
「捕虜…状況?何を言ってるのかが分からない」
「ぶっちゃけちまうと俺らが前半の部隊を負かしたんだよ」
「な…!?」
疑心に満ちていた顔が驚愕に変わる。
ソレを最初に言うと信じてもらえない上に話を聞かずに追い出される可能性もあったんだが…
どうやら言うタイミング的には間違ってなかったらしいな。
「信じるも信じないもあんた次第だ」
「ただ私達の交渉に応じるのならば一緒に同行してもらいたい」
「考える時間は15秒ね」
俺は15、14、13…と将軍に聞こえるよう声を出してカウントダウンした。
「…同行するのなら、部下をつけたい」
残り4秒という所で将軍が了承ともとれる言葉を出す。
「いいけど、多いと進むのに時間かかるから…3名以内で」
「そうね…ソレが妥当な所かしら」
「分かった、ベースキャンプの外で待っててくれ」
「言っておくが今俺らを殺そうとか考えるなよ?これ以上の被害を抑えるためにわざわざ交渉しに来てやってんだからな」
暗にいつでも潰せるという意味を込めての言葉で釘を刺す。
「この軍勢ぐらいなら相手しても勝てる、と思ってるからこそ敵陣にやって来た事をお忘れなく」
テントから出る際にリザリーも釘を刺すような事を言って頭を下げた。
「お、お前ら…なんの話をしてたんだ?」
デカいテントの入り口付近で空気を読める兵士がうろついていて、出てきた俺を見て近づいてくる。
「交渉、ちょっと出口まで案内してくんない?」
「あ、ああ…」
兵士は特に何も聞かずに出口まで案内してくれた。
何故か兵士も出口付近に留まり無言のまま時間が流れる事5分。
「待たせたか?では行こう」
馬に乗ったあの三人組と馬車の御者の方に乗った将軍が来た。
「ソレは乗れってこと?」
「ああ、徒歩では時間がかかるだろう?」
いやいや…だからといって将軍様に馬を引かせるわけにはいかんだろ。
内心ちょっと困ってるとある事を閃めく。
「ねえ、あんた御者とか出来る?」
「…一応馬は乗れるから出来ない事は無いと思うが…少ししか経験はない」
「将軍様に御者をやらせるのも気が引けるからさ、あんたやってくんない?」
「は…?こ、これは将軍!お疲れ様です!!」
今まで三人の方に気を取られて気づかなかったのか兵士はビシッと敬礼して叫ぶ。
「君はさっきの見張りの…」
「しょ、将軍!将軍の手を煩わせなくとも…是非、私めに馬を…御者を、やらせて下さい!」
緊張しすぎてるのか所々声が裏返っている。
「ありがたい申し出だ、受けるとしよう」
「ひゃっ!せ、誠心誠意頑張らせて頂きます!」
…噛んだな、今緊張しすぎて噛んだよな?
「ほら、コレで乗れるだろ?俺は走るからお前は乗っとけ」
「そうね、じゃあ私は楽させてもらうわ」
リザリーは将軍直々にドアを開けてる馬車に乗り込む。
「俺は走るから将軍は乗ってていいよ… ほら、あんたもそんな緊張するんなら深呼吸でもしとけ」
こっちを見る将軍に手を振ってガチガチに緊張してる兵士にアドバイスした。
「しかし…」
「本人がああ言ってるのだから好きにさせておいて下さい…気にしてたら時間がかかりますよ?」
「…分かった」
渋々といった感じでリザリーに促され馬車に乗る。
するとあの三人組の一人が先頭を行くようにして馬を走らせた。
そして次に馬車が走り、その後に背の高い奴と優男の馬がその後ろを守るように追う。
俺は当然馬車の隣を並走するように走っている。
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