27

藍架、愛梨とばあちゃんを会わせて色々と話しさせてから半日後。



俺は今ユニオン共和国のいつもの公園のいつものベンチに居る。



ま、あの後から今に至る話を簡潔に説明すると…



ばあちゃんを苦しまないよう一瞬で絶命させて保管庫(特製)に影移動させ



例のごとく命を狙われながらも藍架達の妖怪退治を手伝い



式部を呼び出して婚約指輪的なのを一つだけ選別させて餞別としてあげてから



影移動で戻って来た。



あの時の式部の驚きようったら…とりあえずかなりウザかったよ。



危うく顔面を思いっきり殴る所だったし。



俺のスーパー過ぎる忍耐力のおかげでなんとかギリギリで堪えたけどな。



…あのヘタレがプロポーズするのは一体いつになる事やら。



あー、でももしかしたらアイツの事だし早ければ半年以内には…



ってなぜ俺があんなド変態の心配なんかしなきゃならんのだ。



頭を切り替えよう…あのド変態の式神使いの事は忘れねば。



…良く考えたら俺、異国に居る間全然寝てなくね?



夜中はずっと無名やら斧やらの手入れしてたし、朝は朝でなんか色々と…



今すっげー睡魔が襲ってきてるのはそのせいか?



…まあいいや、どうせ朝になったらアイツらが起こしに来ると思うから研究所で寝るとしよう。



今の時間って誰か起きてるかな?



誰も起きてなかったら研究所閉まってるから入れねぇぞ。



……あ、そうか!影移動で行けばいいんだ!



いつも歩いて行ってたからついクセで…よし、トイレにでも影移動して部屋でも借りるか。








「ありゃ…ていと…?」


「おー、ショコラか…久しぶり?」



研究所に影移動し受け付けの所に向かうべく廊下を歩いてると眠そうに歩いてるショコラと遭遇した。



「ん…久しぶり…」


「壁にぶつかるぞ…ちゃんと歩けよ」



フラフラと壁にぶつかりそうだったので、ぶつからないように抱き止める。



「…ありがと…」


「なんでそんな眠そうに歩いてんだよ、大人しくベッドに入ってろ」


「……といれ…」



ああ、トイレじゃ仕方ねえな。



「じゃ、転ばないように気をつけろよ」


「…連れてって…?」



ショコラを離して受付に行こうとしたら服の袖を掴まれて可愛げに首を傾げられた。



……ヤバい、無防備すぎて…可愛すぎて襲いそうだ!



頑張れ俺!南無阿弥陀…南無阿弥陀…!!



内心とは裏腹にため息を吐いて億劫そうに仕方ねえな…と言いショコラをお姫様抱っこして来た道を戻る。



女子トイレに入り個室の中に座らせてドアを閉めて外側の壁に背凭れて用を足し終わるのを待つ。



…コレ、他の女子研究員が入って来たらヤバくね?



女子トイレの個室の壁に背凭れてる所を見られたら明らかに変態のレッテルを貼られてしまうよな?



軽くドキドキしつつも結局何のイベントも起こらずにショコラが出てきた。



「…ねむ、い…」


「ちゃんと手ぇ洗えよ、ほら」



フラフラとそのまま出て行こうとするショコラの両肩を掴んで向きを変え、洗面所に立たせる。



「…zZZzZZzZZ」



ジャバジャバ手を洗う音が聞こえたと思えばすー、すー…と言う寝息まで聞こえてきた。



立って手を洗ったまま寝るってどんだけ眠いんだよ…俺だって眠いのに。



「こんばんはー、Bさん帰って来てたんですね」



ショコラを肩に担いで廊下を歩いてたら俺に気づいた女子研究員が会釈をして話しかけてくる。



「今さっき戻って来た、あ…ショコラがどの部屋に泊まってるか分かる?」


「ショコラ…?……ああ!ラグイーズさん!えぇっと、確か135の部屋が埋まってたのでソコじゃないですか?」


「ありがと…にしてもこんな夜中まで大変だねぇ」


「ちょっと研究の方に没頭し過ぎちゃいまして…もうお風呂に入ったら寝ますけど」



研究員のお姉さんはじゃあまた、と笑いながら手を振って歩いて行った。

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