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「どういう事だ!?」


「世界を回るアイツとこの国から出れねえ俺じゃ勝負にならねぇって意味す」



式神とイチャイチャ?しながらおっさんの顔を見ずに告げた。



…もしかしてあの野郎、俺が死人さえも生き返らせれるって事を知ってやがんのか?



確かに俺はアイツを殺しても、必要な時に生き返らせる事が出来る。



だがソレを知ってるのってこの国では藍架だけのハズ。



俺が生きてた事さえ伏せていた調停者がソレだけを教えるわけもない。



…くっそ、あの野郎が俺についてどこまでの情報を持ってるかを早急に掴まないと。



「どうでもいいけどさ、マジでそろそろ時間がねぇんだわ…元々の目的は和平交渉だっけ?どうすんの?」


「はっは!まさか程君から切り出すとはなぁ」


「妖怪が出る時間が近づいてきてるからのんびりしてられないんだよ…妹も迎えに行かないといけないし」



ていくん、って…これまた懐かしいあだ名で呼んでくれたもんだぜ。



「そ、そうだったな」


「てめえらの為に俺が譲歩してあげんだ…どっちが上の立場か理解しろよ」


「…分かった、そっちの条件はなんだ?」


「俺の周りの奴らに絶対手を出さなければソレで良い」



本来なら条件もクソも無い当たり前の事なんだけどな。



「了承した、こちらの条件は我々の仲間に危害を加えずに妖怪退治に協力する事」


「女は殺さないと約束出来るが、男は保証できん」


「…それでは協定にならんではないか」


「じゃあ和平交渉は決裂っつー事で」


「ま、待て!」



クルッと踵を返すと焦ったようにおっさんが椅子から立った。



「なに?」


「どうすれば、いい?」


「どうも?今まで通りでいいんじゃね?俺の周りの奴らに手を出さないんなら何も無いんだし」


「でも気に入らなければ殺すんだろ?」


「殺すかどうかはその時の気分によるけどな」



式部が笑いながら会話に参加してくる。



「触らぬ神に祟りなし、か」


「藪蛇じゃね?ぶっちゃけ外部の人間が俺に関わろうとするとロクな事にならんぜ」


「確かに」


「じゃあどうするの?和平交渉は決裂で今まで通り?」



うーん…今まで通りって言ったらまた藍架に命狙われるし、かと言って和平交渉を結んだら自由に行動できない。



「そだな、今まで通りでいいんじゃないか?」



腕を組んでしばらく考えた結果…結局その結論に至った。



「…もう少ししたら俺もユニオンに戻るし」


「…どういう事?」


「そろそろ友達的な奴らから電話がきそうな気がするんだよ、それに俺がいなくなればこの問題は万事解決!だろ?」


「ほう?アッチにも友達的な奴がいるのか…男か?女か?」



俺の友達?に興味を持ったのか、それとも外人に興味を持ったのか…結構食い気味に聞いてくる。



「両方、友達的なポジションになるために結構頑張ったから見た目はかなり良いぞ」



見た目だけなら、藍架や愛梨にも負けず劣らずな奴らだ。



性格も入れた総合的に言えば、家族である藍架達の方が上かな。



性格的な順番に表すと…愛梨>ショコラ=マキナ=藍架>リザリーだと思う。



リザリーのやつ見た目はいいが性格的な部分では毒々し過ぎる。



「紹介しろ、と言いたい所だが…残念無念諦めるしかないか」


「死にたくないなら…な、死にたいなら手を出してもいいぜ?」


「冗談を!俺は式神で間に合ってるんでな」



この変態が!と言いたい所だが、俺にもちょっと思う所があるので断念。



「で?結局和平交渉は意味無かったって事?」



藍架はため息を吐きながら呆れた口調で聞いてきた。



「いんや、少なくともそっちのおっさんには色々と収穫があったんじゃないかな」



俺を敵に回したらどうなるか、っつーのが直接的に分かったんだし。



しかもソイツがそろそろこの国から去るって情報はかなりの朗報だろ。

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